同じ右手ですが以前と違うところが痛くなりました
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は右母指の痛みがある40代女性のお話です。
といっても、この方は右手関節の痛みで以前ご紹介したことがある方で、case_201でご紹介していますので、以前はどんな痛みがどのようにして良くなったのかをご覧いただけます。
簡単にご紹介すると、トリマーのお仕事で手をよく使う方なのですが、マッケンジー法で評価した結果は頚椎のエクササイズで症状が改善する腱鞘炎モドキでした。
しかし、8ヶ月ほど前は右手関節の橈側あたりの痛みだったのですが、今回は右母指MP関節の症状です。右手首が痛くなったときにやっていたエクササイズはというと、しばらく全くしていなかったらしく、今回の痛みが始まってからまたやってみまたそうです。すると、エクササイズをした直後は右母指の痛みが少し軽くなるもののまた痛くなるという状態の繰り返しの状態でした。
動かし方で痛みがあるようなのですが、痛いときと痛くない時があって、今は右母指を曲げ伸ばししても痛みが再現できません。
MP関節を指で押すと5点(考えうる最大の痛みが10点満点として)の痛みがあることを確認できました。
この「痛いときと痛くない時がある」というキーワード、聞いてピンとくるあなたはもうすっかりマッケンジー法通ですね!
まずはエクササイズをどのようにやっていたのかチェックしてみることにします。
しっかりと頚椎を伸展するやりかたを1セットあたり4回やっていたと言われるので、いつもと同じ4回やってもらってから伺います。
さっきの親指のところを押してみてもらえます?
やっぱり少し痛くなくなるんですよね…
何点くらいになります?
2点くらいかな
(反復RET+EXT w/op self 4回 NRS 5 → 2, B)
5点の痛みが2点になるわけですから、今回も頚椎に関連した痛みであることは間違いなさそうです。
頚椎の可動域もよく、エクササイズ自体は良くできているように見えます。
しかし、多くの方がもう少しだけ超えられない壁があります。
すごく上手にできてるんですが、以前差し上げたエクササイズのやり方を書いた説明書のポイントにマークしたの覚えてます?
ほとんどの方が経験するので、必ず皆さんにエクササイズのやり方を書いた説明書にポイントにマーカーでラインを引きながらご説明するようにしてます。
なんでしたっけ…
『できるだけ』なんですよ
この『できるだけ』とは、マッケンジー法ではエンドレンジと呼ばれます。同じエクササイズでも行けるところまで目一杯やるというイメージの表現です。
見た目が同じでも、このちょっとした違いが大きな反応の違いとなって現れます。
この大切さをご説明して3回だけ追加でやっていただきます。
あっ!痛くない!
(反復RET+EXT w/op self 3回 ER意識 abolish B)
何度も動かしたり、押したりしながら確かめて、さっきまで2点あった痛みが完全になくなったのを確認できました。
やっぱり今回も首でしたね!
ですね
この診察の様子をうかがっていた看護師が「魔法みたいですね!」と言いました。
私自身、研修を受け始めた頃、初めてマッケンジー法のデモンストレーションで肘の痛みがある患者さんの症状が頚椎の動かし方に応じて目の前でコロコロと変わるのを見たとき、本当に魔法みたいだと感じたのを昨日のことのように覚えています。
しかし、マッケンジー法は魔法使いでなければ使えない方法ではありません。
国際マッケンジー協会日本支部ではこれからマッケンジー法を学びたい方のための講習会を開催しています。ご興味のある方はぜひ講習会に参加してご自身で体験されると、それが魔法ではないことがおわかりいただけるかもしれません。
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マッケンジー法で評価・治療した方々が、どのような経過で良くなっていったのかをご紹介しているブログ「マッケンジー法・症例ファイル」。掲載してきたお話の中から抜粋し、マッケンジー法で使われる専門用語には欄外に解説を入れ、文字だけではお伝えするのが難しかった特殊な体の動かし方についても挿絵を入れながらまとめ直した「マッケンジー法・症例ノート」全32話。
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