時々、左足の母趾と両膝が痛くなります
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は左母趾の痛みと両膝の痛みがあるという10代女児のお話です。
1〜2ヶ月前から、ときに左母趾の痛みを感じるようになりました。バレーボールの後などに両膝の前面、膝蓋骨の下辺りも時々痛いことがあり、膝は右のほうが痛いようです。3〜4日前から症状が強くなりました。今は少し軽くなっていて、左母趾付け根を押したときの圧痛が2点(考えうる最大の痛みが10点満点として)です。歩行での痛みはありません。
痛みはバレーボールの後に強くなるのですが、じっと立っていても痛くなることあるようです。
下肢の症状ですから、マッケンジー法では……そう、腰椎から診察します。
単純X線写真ではやや腰椎の前弯(反り)が強いくらいで特に問題ありません。
姿勢が悪いので姿勢を矯正してみますが足の痛みは変わりません。
腰椎の可動域を確認すると、伸展や横の動きなどは柔らかいのですが、屈曲が中等度に制限されています。
最初に動きの制限がある方に動かしてみることにします。
座った状態で、最初から少し負荷を強めにしっかりと自分で腰を曲げることを10回繰り返します。
さっきの痛いところ、もう一回押してみようか
さっきより少しいいかな……
はっきりしませんので、もう1セット。
どう?
さっきより痛くないです!
(FISit ER意識 10回 B 圧痛 2→1点)
今回のベースラインとなる症状がとても軽いため、これだけではなんとも言えませんが、少なくともいい印象です。
このような場合はこれ以上あれこれ続けずに、症状が改善しそうなエクササイズを宿題にしてみます。
それから1週間後。
すっかりよくなったようです。
エクササイズは日によって少し違うものの、5〜10セット/日は出来ています。
エクササイズを始めてから3〜4日目から痛みがなくなって、今は全く痛くない状態が続いています。
もちろん、バレーボールも全く問題なくなりました。
それでもお約束なのでしっかりとエクササイズを続けてくれています。
もうしばらく様子を見てみることに。
それから2週間後。
全く症状のない状態が続いていますが、それでもエクササイズは一日3セットはやっています。
バレーボールの後も痛くなることはありません。
もしまた足とか膝とか痛くなったらどうする?
回数を増やす?
そうだね。それでもだめだったら?
病院に来る?
その前にしてもらいたいのは、本当にしっかりと出来ているかのチェックかな
少し猫背の姿勢が気になりますので、このお子さんに合わせた座り方を指導します。
お母様にもみていただき、ポイントを理解していただき、もし何かわからないことがあったら来ていただくことにして卒業としました。
今回のように、あることをすると痛いけど、診察室ではさほど痛くない……症状ですから、当然そんなこともあります。
そんなときには、マッケンジー法の一つの手段として、得られた情報から症状が改善できそうな方向を選び、少なくとも症状が悪くならないことを確認して宿題にしてみます。
そして、その結果をフォローアップ時にフィードバックしてもらい、次に進む道を決めていくのです。