case_178 左手関節痛

最初は左母指がビリビリして、まもなく左手関節が痛くなりました

整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもあるがどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は左手関節の痛みで来院した40代女性のお話です。

一週間ほど前からこれといって思い当たることもなく左母指あたりがピリピリする感じがでてきました。それから数日して今度は左の手首が痛くなりました。
これまでに首周りや肩の症状などはまったくないようです。

マッケンジー法では、手首の痛みについては、たとえ首周りの症状が全く無くても、頚椎の評価から行います。

座っている姿勢は頭が少し前に出たやや悪い姿勢で、単純X線検査で頚椎には変性などはないのですが、ストレートネックだということがわかります。
ご本人も自分が猫背であることは自覚しています。

フライパンを持ち上げていただくと、左手関節に7点(考えうる最大の痛みが10点満点として)の痛みが再現できます。

まずは姿勢を矯正して1分ほどその状態を保持してからもう一度フライパンを持ってもらいます。

A子さん
A子さん

あっ、さっきより痛くないです…

(姿勢矯正保持 フライパンの持ち上げの痛み5点 B)

続いて頚椎の可動域を確認してみます。

動きにさほどの制限はないのですが、アゴを後ろにひく動作での可動域確認の際に、左母指に少しピリピリとした感じを覚え、また、伸展(上を向く)で左手関節に軽いピリピリした痛みを感じたようですが、いずれも嫌なほどの痛みではなく、その動作をやめると痛みは残っていません。

このように動作をしているときに痛みがあっても、マッケンジー法の評価ではその痛みをきちんとモニタしながら、同様の動作を続けることもあります。

今度は座ったままでしっかりと背骨を伸ばしながらアゴを引く動作を繰り返してみます。

さっきは左母指にピリピリきたのとほとんど同じ動きですが、今度は痛みがあまりありません。

フライパンを持ってもらうとまた痛みが軽くなっています。

(SOC 5回 B 5点→4点)

首の動きには全く問題ないので、今度はさらにしっかりと頚椎の伸展までやってみます。

すると、最初の1回目の伸展のときに首の後ろが痛いと言われました。

A子さん
A子さん

普段上向かないですから…

このような場合は本人と相談してどうするか決めるのですが、さほど強い痛みではなく、もとに戻ったら痛みは残っていない程度ですので、もう少し続けてみることにしました。

すると、繰り返しているうちに、首の痛みは軽くなり、最終的に上を向いても痛みは感じなくなりました。
フライパンを持ってもらいます。

A子さん
A子さん

あっ、またさっきより痛くないです!

(RET+EXT 5回 B 4点→3点)

とても上手にできているので負荷を上げて、さらに5回。

佛坂
佛坂

さぁ、確認タイムです

A子さん
A子さん

痛くないです!

佛坂
佛坂

ゼロ?

何度か持ち上げながら

A子さん
A子さん

ゼロじゃないですけど……1点くらいかな

(RET+EXT w/op self 5回 B)

今回はフライパンの持ち上げるときの7点あった左手関節の痛みが頚椎を伸展させる動きをいくつか試すうちに1点にまで改善しました。
頚椎に関連した手関節の痛みがある症例はこれまでにも多くご紹介してきたとおり、決して稀ではありません。

途中、痛みが誘発される動きもありました。その時にその動きを止めずに続けてもよかったのかな……そう思われた方も多いのではないでしょうか。

マッケンジー法ではある動きで痛いからやめるというような単純な発想ではなく、その動きを続けるとどのように痛みが変わるのかということを細かくモニタリングしながら症状を改善する動きを見つけていきます。