case_149 左臀部痛

一年前から続いているという左臀部痛、MRIなど画像では異常はないようです

整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもあるがどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は一年前から続いているという左臀部痛で来院された80代男性のお話です。

以前からときに腰痛は有りましたが、痛いときは湿布やマッサージをしてもらうと2〜3日で治っていたようです。
元々とても活発な方で、ゴルフは月に1〜3回、週に4回ほどジム通いして軽い筋トレするなど、出て回るほうでした。

一年ほど前にゴルフのラウンド中、ハーフを回ったあたりで腰の左あたりが痛くなりました。
その後、お近くの設備の整った整形外科の病院にかかり腰のレントゲン検査、MRI検査など受けたのですが、異常なしとのことで、対症療法的な治療を受けたのですが症状は変わりませんでした。その後しばらくしてさらに大きな総合病院で腰のレントゲン検査、MRI検査を再度受けましたが、やはり異常はありません。もちろん手術で治るようなものではないので、その後は保存療法の方針となり、お近くの整形外科で温湿布と牽引など40日間ほど続けたのですが、全く治療効果はありませんでした。痛みのためそれまで楽しんでいたゴルフ、ジム、プールもやめて家にこもりがちになってしまいました。今は近くのスーパーに奥さんと歩くくらいで、ほとんど座っている生活で、家ではテレビの番をしていると言われます。

症状は、座っていて歩きはじめに左の臀部を押さえて立ち上がらないと立ち上がれず、左脚に体重がのると痛いので少し右脚に体重を載せがちな歩き方です。特に歩き始めに左臀部の痛みがあります。

既往歴としては心カテ、ステントを複数回入れるなどの心疾患治療歴がありますが、単純X線検査では年齢相応の変形がある程度で特に運動負荷をかけて問題になるような所見はありません。

まずは姿勢をしっかりと整えて1分ほど続けてみます。

佛坂
佛坂

もう一回立ってみましょうか

先ほどと同じように立ち上がっていただきます。

佛坂
佛坂

いまおしりの痛みはどうでした?

B男さん
B男さん

今は痛くなかったですね。立ってると少しお尻の痛みがあります

もともとあった立ち上がるときの痛みは感じませんでしたが、その状態をキープするといつもの痛みが戻ってきたようです。

腰椎の可動域はいずれの方向も中等度以上に制限されていますが、動かしたあとに痛みが強くなることはありません。

そこで、診察室の流し台のところにお連れして、腰椎の伸展をしてみます。
最初はご自分のペースで少しずつ…

もう一度、先ほどと同じように座っていただ、立ち上がっていただくとさっと立ち上がれました。

佛坂
佛坂

歩いてみましょうか

そのまま診察室の中を歩いてもらいます。

佛坂
佛坂

おしりの痛みはどうです?

B男さん
B男さん

今は…痛くないです!

もう一度、さらにしっかりと伸展するやり方をご説明します。
どこまで伸展しても大丈夫なのか、安全性を診察室で確認しておきます。

しっかりと反らしても全く問題ありません。

もう一度座っていただき、また立って歩いていただきます。
すべての動きの間に全く痛みがないことを確認しました。

ご自宅でやっていただくエクササイズのことなど、しばらくご説明しながら座りっぱなしを続けた後に、もう一度立ち上がって歩いていただいて確認しましたが、立ち上がりの痛みもなく、歩くときにも左臀部の痛みはない状態が持続していることを確認できました。

それから4日後。2回目の診察になります。

かなりよいようです。一年間も症状が変わらなかったのに、この数日のことであまりにも調子良いので驚いていると言われます。
先程、車から降りるときに少しだけ痛かったようですが点数にして2-3点(考えうる最大の痛みが10点満点として)くらいとあまり気にならないようです。

座った状態での症状をお伺いすると、2点程度の左臀部の痛みがあります。

姿勢をしっかり整えてみます。
やはり痛みは消えてしまいます。

(姿勢矯正保持 abolish)

エクササイズのチェックをします。
流し台のところでしっかりと腰を伸ばした後に歩いていただきます。

B男さん
B男さん

今は…痛くないですね

(EIS流し台 5回 abolish B)

最近ではMRIの異常所見と痛みなどの症状とが必ずしも合致しないといった報告がなされています。この方は幸いにしてMRIに異常所見がなかったので手術には至りませんでしたが、仮にこの方のMRIで神経を圧迫するように見える所見があったとしたら…。
症状を軽減するために手術を選択されていた可能性も否定はできません。

また1年もの間続いていた痛みなので、一般には慢性疼痛として薬物による治療が選択されることもあるでしょう。しかし、マッケンジー法で評価した結果、なんら痛み止めなどを使うこともなく数日でほぼ症状は問題にならないレベルにまで改善しています。

手術しか無いと言われた方、あるいは手術を受けるのは嫌なので痛みを我慢するしか無いと諦めておられる方、お近くの認定セラピストの在籍する施設でマッケンジー法による評価を受けてみてはいかがでしょうか。