case_139 左手関節痛

腱鞘炎なのでしょうか、昨日の夕方から急に左手首が痛くなり少し腫れています

整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもあるがどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は左手関節の腫れと痛みで来院した50代女性のお話です。

ケーキ工場でケーキの箱詰めの仕事を4年ほどしていて、以前、右手首の腱鞘炎と思われる痛みが何度かあったようです。昨日の夕方、急に左手首が痛くなってきて、その後、少し腫れている感じが出てきました。昨日はアイシングして、インドメタシンなど手持ちのお薬を塗って今日は少しは良いようです。

左手関節の痛みのある部位を確認すると、左前腕遠位橈側(肘と手首の間の部分の手首に近い親指側)が少し腫れていて、手関節をぐっと自分で曲げると腫れている部位に痛みが走ります。
フライパンを持ち上げる動作をすると、7点(考えうる最大の痛みが10点満点として)の痛みがあり、フライパンを持ち上げられません。

座った姿勢は普通なのですが、まずはしっかりと姿勢を整えて1分。
手首を動かしてもらうと、さっきより少しいいかも?というくらいの変化はあるようです。

頚椎の可動域については、全く問題なくすべての方向に動かせることを確認できました。

しっかりと頚椎を伸展するやり方をご説明し、まずは一回やってもらいます。

佛坂
佛坂

大丈夫ですか?

A子さん
A子さん

気持ちいいです!

頚椎をしっかりと伸展する(上を向く)ときに、ふらつきやめまいなどを起こすこともありますので、このように声をかけながらやっていただきますが、特に問題ないようですので、さらに5回。

もう一度フライパンを持ち上げてもらいます。

今度は少し持ち上がりました。

佛坂
佛坂

痛みはどうです?

A子さん
A子さん

3点くらいです!

(RET+EXT 5回 B 3点)

さらに負荷を上げて5回伸展してから、もう一度フライパンを持ち上げてもらいます。

A子さん
A子さん

だいぶいいです!

ひょいとフライパンを持ち上げ振れました。

佛坂
佛坂

フライパン振れましたね!何点くらい?

A子さん
A子さん

2点くらいです

(RET+EXT w/op self 5回)

エクササイズのポイントなどご説明して初回評価を終了します。

それから2日後。

もうほとんど症状は無いようです。

初診の日の夜には少し腫れも引いてきたそうで、今は少しだけ腫れが残っているかなというくらいになっています。

手関節を動かすと、まだ1点くらいのごく軽い痛みが残っています。

エクササイズはかなり頑張ったようで、エクササイズをやってるうちに首肩周りが張ったような感じがでてきて、これでよいのかと思っていたそうです。実は、この筋肉痛が起こるほどしっかりとエクササイズを頑張ると、結果が早く出ることが多いことなどご説明して安心していただきました。

エクササイズをチェックします。

A子さん
A子さん

あぁ、いいです!

(RET+EXT 5回 B)

やはり少し改善します。

とても体の柔らかい方なので、軽々と伸展ができてしまっています。

佛坂
佛坂

今、とても良く出いていて、エクササイズの後に症状が軽くなっているので、何も修正する必要は無いのですけど、上手にできている人の気をつけるべきところをお話しておきますね

しっかりとやるところが抜けやすいことをご説明します。

佛坂
佛坂

自分だったらこうするというところをやってみますから見ててくださいね!

ポイントをお話しながらやり方を実演してみせます。

A子さん
A子さん

わかりました!

実際にご本人にやっていただくと、よく理解されていて「しっかりと」を意識したやり方ができている事がわかります。

もう一度、フライパンを何度か振りながら、

A子さん
A子さん

もう何とも無いです!

(RET+EXT w/op self 5回 abolish B)

加えて、すぐに良くなる人の陥りやすいパターンとして、治ってしまいパタリと体操をしなくなってしまい数ヶ月してからまた同じ症状でお見えになる方があることをお話すると、

A子さん
A子さん

ブログに書いてありましたね!

すでにマッケンジー法・症例ファイルを読んでいただいているようです。

痛みの場所と局所の腫脹、痛みの誘発される手関節の動かし方などの所見からはドケルバン腱鞘炎など手関節周囲の腱鞘炎が急性発症したと考えてもおかしくない状態でした。しかし、マッケンジー法による評価の結果、頚椎のエクササイズのみで症状が速やかに改善したことを考えると、「腱鞘炎モドキ」であったことは間違いなさそうです。

このような「腱鞘炎モドキ」を以前にも症例ファイルでご紹介しましたが、本物の「腱鞘炎」とどうやって見分けるのか。

それは実際に脊椎から順にメカニカルな負荷をかけて評価をしてみないとわからないのです。