二年ぶりの運動部活、走っていて左かかとが痛くなってきました
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は左踵痛で来院した13歳の男児のお話です。
幼稚園で年中の頃から小学校4年生までサッカーをしていましたが、小5、6年でそろばんに目覚めてそちらに熱中し運動をしなくなりました。でもやっぱり運動が好きで中学に入って陸上を始めました。1週間ほど前、陸上の部活で走っていて左踵が痛くなりました。特にひねったり打ったりなどはしていません。久しぶりに走ったからかなぁと思っていました。その後、少し痛みの場所が変わり、だんだんと踵の後ろのほうが痛い感じになっています。
左踵のどこが痛いかと尋ねると、あまりここといった場所がなく、このあたりという感じの範囲のはっきりしない痛みです。
また、よく聞いてみると、以前から、ある時は右足首、ある時は左足首あたりにと、あまり理由のわからない軽い痛みを覚えることがありましたが、すぐ治っていたので気にしていなかったようです。
このころころと痛みの場所が変わるという訴え、日常的にマッケンジー法を用いて評価している皆さんにはある分類を思わせる症状です。
単純Ｘ線写真では腰椎の前弯（前方に凸の反り具合）がやや強いようです。
姿勢は最近のお子さんの多分にもれず、だらりとした悪い姿勢です。
姿勢をしっかりと矯正して保持すること20秒ほど……
痛いです…
腰椎の伸展を強くして姿勢を正すと左踵の痛みが強くなりました。
最初に見る方向が決まりましたね！
まずはビフォーの状態を確認するために診察台の周りを一周歩いてみます。
ちょっと歩きにくそうで、痛みの程度は4-5点（考えうる最大の痛みが10点満点として）です。
座ってもらい、腰椎をしっかりと5回屈曲してみます。
ちょっと歩いてみようか。……痛みはどう？
さっきより少し痛くないです
良い印象ですからさらに負荷をしっかりとかけて10回。
もう一回、同じように歩いてみようか
だいぶ痛くないです
最初が4-5点だったら、今は？
1-2点くらいです
（FISitting w/op self 10回 さらにER意識して B）
それから3日後。
すっかり良くなっています。
初診の翌日には全く痛みがなくなっていました。
現在は以前のように走っても全く症状がでません。
このお子さんの場合、1週間ほど続いている左踵の痛みが1日で良くなってしまいましたが、マッケンジー法による評価で劇的に症状が改善するお子さんが少なく無いことは、過去の症例ファイルでもご紹介しているとおりです。
しかし、すぐに良くなってしまうのは逆に要注意でもあります。それは姿勢を含めた生活習慣の改善が習慣化する前に治ってしまうため、また悪くなることも考えられるからです。
また痛くなったらどうしたらいいと思う？
からだを曲げながら、
……こう？
そうだね、まず体操だね！
このお子さんにも、エクササイズは朝夕は続けること、そして腰は反らし過ぎないように骨盤を倒して姿勢良く座る座り方も指導して、自分で出来ることを確認し一旦卒業としました。
もしまた悪くなって来院したら？
大丈夫です。そのときにはまたマッケンジー法による評価を行い、再び自己管理ができるように指導を行っていきます。