case_24 腰痛・腰椎分離症?

10代で腰椎分離症と診断されて以来続いている腰痛

整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は慢性の腰痛がある30代の女性のお話です。

実はご本人は受診の予定ではなかったのですが、お子さんのケガで当クリニックを受診され、その待ち時間に外来の待合スペースに掲示しているプロフィールの紹介で、私の専門分野に「マッケンジー法」というのが書いてあるのをたまたまご覧になったようです。

マッケンジー法っていったい何なんだろうと思われたようで、お子さんの診察が終わった後にたずねられましたので、首肩腰や手足の痛みなどをお持ちの方の症状が動きでどのように変化するのかをお聞きして診察をしながらどのような動きがその人に合っているのかを見つけて症状を改善していくような方法であることをご説明しました。

10代半ばの頃、腰椎分離症と診断され、以後、ずっと腰痛に悩まされていたようです。

もちろん、腰椎分離症があってもマッケンジー法の評価はできますので、その旨お伝えして一応レントゲン写真を撮影しました。

レントゲン写真では確かに完全な分離症とそれによる椎間板変性を伴った軽度のすべりがはっきりと認められます。屈曲・伸展側面像の撮影もしていますが、大きな不安定性はありません。
これまで、お近くの整形外科でレントゲン撮影をされて、腰椎分離症を指摘され、疼痛が強い時に鎮痛剤の投薬やコルセット処方を受けておられましたが、改善が無かったようです。

よくお伺いしてみると、事務職をしていた一年間ほどは全く症状がありませんでした。
その後、農業に従事するようになってからは慢性の腰痛に悩んでおられます。

レッドフラグなしです。

可動域検査をすると、屈曲(前かがみ)は疼痛無く指先が床に着きますが、伸展(腰をそらす)は3点(考えうる最大の痛みが10点満点として)の痛みのためほとんど出来ません。
横に腰を動かすと、左側への横に腰をずらすような動き(サイドグライドと呼びます)で3点、右側へののサイドグライドで4点の痛みがありますので、これらをベースラインとします。

国際マッケンジー協会認定セラピストでしたら、ここまで評価してみて、まずは伸展方向が良さそうだと考えると思います。

さっそく、臥位での伸展をやってみます。

一回目、3点で途中に腰痛が出現しますが、もとに戻ると元通りです。

(PDM produce 3点の腰痛 → NW)

特に症状の増悪はないので続けます。

同じ腰をそらす動きを10回反復します。
すると最後の10回目のころにはすでに痛みらしい痛みは感じなくなりました。
立っていただき、少し歩いていただくと、評価前にあった広い範囲の腰痛が比較的狭い範囲に集まって小さくなっているようです。

お若くて比較的柔らかい方なので、さらに続けます。

両手の下に折り曲げたタオルをいれて高さを上げて、さらに完全伸展位でお腹を下げる動作を入れて10回。
しっかりやると体が熱くなりますから付き添いでみている外来看護師もウチワで患者さんを仰いであげながら応援します!

そして再び立って腰を伸展していただくと……ぐぐ〜っと腰を反らせます。

さらに前かがみをしてみると……さきほどの腰を反復伸展する前の屈曲よりもさらに柔らかくなって、指先が曲がるまで屈曲できました。
そして起き上がるなり、

A子さん
A子さん

前に曲げるのも楽になりました!

初回評価の後、感想を伺いましたが、これまで受けたどの治療より効果があったと自覚されたようです。

A子さん
A子さん

自分は腰椎分離症だから腰痛があるとばかり思ってました…

ただの思いこみだったことに気づいてもらえたようです。

佛坂
佛坂

もう分離症のことは忘れましょう!

今回もそうでしたが、過去に整形外科で画像診断を受けて、自分の症状の原因がそこにあると信じ込まされている方が数多くいらっしゃいます。実際にはその関係を立証するのは大変難しいことですし、マッケンジー法による評価を行ってみると、画像所見に関係なく症状の改善する方は少なからず存在するのです。

今回はお子さんのケガがなかったら当クリニックには来られなかったわけですので、お子様に感謝しないといけませんね。