case_6 両手指しびれ

10年もの間、常に両手がしびれています

整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は両手のしびれがある50代女性のお話です。

10年も前から両手のしびれがあるのですが、大したことがないのでと放置していたようです。

半年ほど前から右手のしびれが増悪し、最近になって母指の使いにくさを自覚するようになり、近医で筋電図検査を受け、手根管症候群を疑われ当科へ紹介となりました。
神経伝導速度とよばれる神経障害の程度をみる検査結果も添付されていましたが、やや描出不良の部分があったものの、左右差はあるようです。

自分で手術をしていた頃の自分でしたら、ここで再度確認のための伝導速度検査を実施して、その結果に前医の検査結果と矛盾がない事を確認した後に、手術予定を組んでいたと思います。

しかし、case_5でご紹介した症例で劇的ビフォーアフターを見てしまった以上、頚椎をしっかりと評価せざるを得ません。

ちなみに、しびれの範囲は橈側に強いものの、母指から小指までしびれ感があるとのことで、手根管症候群としては非典型的です。さらに正中神経領域の知覚鈍麻は全くありません。たまにしびれのひどい症例では小指の方までしびれた感じを訴えられることもないことはないのですが、小指にもわずかにしびれ感を感じているという情報は要注意です。

さらに、夜間痛など手根管症候群に特有の症状もありません。

姿勢チェックすると、頭が前に出た悪い姿勢です。

(Protruded head +)

持参されたMRIでは頚椎(C5/6/7)の変性があり、ストレートネックです。

これらの情報があると、マッケンジー法で頚椎評価をしてみたくなります。

さっそく評価を開始します。

お話をお伺いする限りはレッドフラグとよばれる危険な状態はありません。

姿勢を整えてしばらく様子を見てみますが症状に変化はありません。

頚椎の可動域検査ではやや制限されている程度です。症状に影響はありません。

坐位での評価を開始します。

可動域検査で動きで誘発される症状は有りませんでしたから最初からしっかりと5回伸展してみます。

なんら影響はないようです。

加えて5回。

伸展がまだまだできていません。

(RET+EXT 5回☓2セット NE)

更に頑張ってもらい、少し負荷を上げたやりかたでやってみますが、これもあまり変化がありません。

(RET+EXT w/op self 5回 NE)

少し後ろに倒れがちなところを首のあたりの背骨をしっかりと支えてあげながらもう一度やってみます。

……すると……

左手指指尖部のしびれは全指で改善し、右環指と小指のしびれも改善しました!

もちろん今回の評価結果から手根管症候群が完全に否定出来るわけではないのですが、仮に頚椎と手関節の両方に原因があったとしても、手根管症候群としては非典型的であったこともあり、頚椎の関与が濃厚と思われました。

ネットで検索すると「手 しびれ」というキーワードからは手根管症候群という診断名が多くヒットします。
しかし、同様の症状であっても、頚椎に関連したしびれは少なくはないのです。