2ヶ月前から続く右肘の痛み
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法(MDT, Mechanical Diagnosis and Therapyとも呼ばれます)による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は肘の痛みで来院した70代女性のお話です。
70代と言っても清掃のお仕事で週3日働いているという現役の女性です。2ヶ月ほど前に、ふと右前腕の筋肉痛のような感じで右肘が痛くなり、重い物が持ちにくくなりました。その症状を感じるようになった少し前のこと、右後ろのものをリーチして右手で取ろうとしたときに、右首筋に痛みが走ったことがあり、それが影響しているのかなと感じているようです。趣味で週に一回テニスをしていたのですが、最近は右肘が痛くなってやめています。重いものを持つ時の他に、調理の時にフライパンが使いにくく、瓶の蓋開けもしにくいようです。右の肩がぐつぐつして少し動かしにくいこともあり、近くの整形外科にかかったところ、右肩と右肘のレントゲンを撮影され、レントゲンには異常が無いと説明をうけ、右肩関節周囲炎と診断されリハビリに通うようにと言われたそうですが、そんな話を知人にしたところ、その方からすすめられ当院を受診されました。
右肩、右肘には異常なしとのことですが、頚椎の確認はされていないようでしたので、頚椎の単純X線写真を確認したところ年齢相応の軽度の変性初見とストレートネックがあります。
現在の症状は右肘内側の上腕骨内側上顆の少し遠位あたりに6点(考えうる最大の痛みが10点満点として)の圧痛あることが確認できましたのでこれをベースラインに評価を続けます。
まずは姿勢を矯正して1分ほど保持し、もう一度確認してみます。

さっきの肘の痛かったところを押してみてもらえますか?

あれっ…えっ?さっきより痛くないです
(姿勢矯正保持 B 圧痛 6→3点)
続いて頚椎の可動域を確認します。左右の側屈、回旋が軽度制限されていて、動かす時に右首筋のつっぱり程度の違和感がありますが、動きにはあまり問題ないようです。
姿勢を矯正保持することで良い反応がありましたので、引き続き座位のままでしっかりと頚椎から胸椎の伸展するやり方をご説明し10回繰り返してもらいました。

肘の痛かったところ押してみましょうか
何度もあちこちと探しながら

あれっ…痛くないです!
(SOC abolish B)
今回のお話、皆様はどう思われたでしょうか。これまでにも肘の痛みについては今回のお話と同様の脊椎(主に頚椎から上位胸椎)に介入して症状が改善した症例をご紹介してきました。その症状は肘の痛みを呈するテニス肘という病名で一般の方にもよく知られている上腕骨外側上顆炎やゴルフ肘として知られる上腕骨内側上顆炎ととてもよく似ています。今回ご紹介した女性も、症状の強くなる動かし方や痛みの部位、圧痛の部位などはまさに上腕骨内側上顆炎を思わせる症状だったと言えます。
まるで四肢の腱鞘炎のような症状があって、同様に脊椎に介入して症状が改善する症例もご紹介してきましたが、このような病態を私は「腱鞘炎モドキ」と呼んでいて、拙著である「マッケンジー法・症例ノート【完全版】」でもご紹介しています。
マッケンジー法(MDT, Mechanical Diagnosis and Therapyとも呼ばれます)では四肢の症状であっても必ず脊椎から評価を進めます。それは今回のような一見すると肘の問題のように見えて実は脊椎に関連した症状であることは稀ではなく、そのような病態を確実にスクリーニングできるからなのです。
