case_309 左手関節痛

内科の病気で入院中、昨日から左手関節が痛くなりました

整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもあるがどのようにマッケンジー法(MDT, Mechanical Diagnosis and Therapyとも呼ばれます)による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は左手関節のある80代男性のお話です。

感染性の内科疾患で入院中で、治療はうまくいって来週にも退院という状態だったのですが、昨日起きあがろうと左手をついた時に左手首に痛みを覚え、以後、左手関節の痛みが続いています。じっとしていれば痛いことはないのですが、手関節を背屈して手をつくような動作で痛みがあるようです。起き上がってもらい、ベッドに端座位になってもらうと、たしかに起き上がる時に左手関節を背屈しないでいいようにグーで手をついて起き上がっています。

左手関節は特に腫脹や熱感もなく、軽く動かすくらいでは特に症状は誘発されません。手関節を背屈していくと5点(考えうる最大の痛みが10点満点として)の痛みが手関節というより母指球の付け根あたりにあるようです。母指と小指の対立動作(母指と小指の指先を合わせるような動作)をしてもらうと、同じ部位に5点の痛みが再現できることが確認できました。

ベッド端座位での姿勢は猫背です。

お話を伺って体を動かして特に問題なさそうであることを確認した後に、まずは背骨をしっかり起こして頚椎から胸椎をしっかり伸展する動きを繰り返してみます。

一回一回丁寧にしっかりと伸展を10回ほど繰り返してからもう一度うかがいます。

佛坂
佛坂

さっきの親指と小指を合わせるのをやってみましょうか

何度か動かしながら、不思議そうに、

B男さん
B男さん

痛くないです…

エクササイズのやり方と頻度をご説明し初回評価を終了しました。

病棟ですから時間を空けて何度か様子をうかがいましたが、エクササイズを繰り返し一日と経たないうちに症状は消えてしまったようです。

以前にも入院中に肩が痛くなったという方で頚椎から胸椎の運動で症状が改善したお話をご紹介したことがあります。入院中は寝て過ごすことが多くなります。それが悪いということではないのですが、普段と違う生活パターンが続くと、それによる影響がいろんな形で出てくることがあります。あまり理由の思い当たらない手足の痛みを覚えたら、ひょっとしたら普段より横になっている時間が長かったからかも…今回のお話が、そんな普通には思いつかない視点のヒントになれば幸いです。