部活で走った後、急に踵が痛くなりました
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法(MDT, Mechanical Diagnosis and Therapyとも呼ばれます)による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は部活で走った後に右踵が痛くなったという高校女子のお話です。
陸上の部活歴は2年ほどあります。最近、少し走る距離が増えていましたが、昨日は4kmほど走ったくらいで、いつもよりむしろ短い距離でした。走っている最中はなんともなかったのですが、走り終わって間もなく、突然右踵に激痛が走り、以後歩くときに右足がまともにつけないほどでした。一夜明けてだいぶ痛みは良いようなのですが、まだ歩くと右踵に響く痛みがあり来院しました。
これまでに他の部位が痛くなったことはないか確認すると、2ヶ月ほど前に腰が少し痛かった時期があり、また2週間ほどまえに両足背が痛くなったこともあったようです。いずれも自然と良くなったのであまり気にしていませんでした。
歩く時には痛みがありますが、座っている状態で足首を動かしてもなんともありません。立ち上がって足踏みすると2点の痛みがあることが確認できました。
座っている姿勢は特に問題ありません。
腰椎の可動域検査ではいずれも制限はないのですが、屈曲は伸展にくらべやや硬い印象です。痛みはありません。
1分間ほど姿勢を矯正保持してから足踏みする時の右踵の痛みを確認しましたが2点のままです。
可動域検査で立位での腰椎の柔軟性は確認できていましたので、まずはうつ伏せになってもらい、うつ伏せでの腰椎の伸展をできるだけやってみることにしました。
一度どのくらい腰椎の伸展ができるのか確認してみると、楽にぐーんと反ることができます。
手をさらに手前について、上半身を持ち上げ、さらに持ち上がったところでさらにてを手前につき直して限界まで腰を反らすように説明してトータル10回。立ち上がって足踏みしてもらいます。

さっき2点って言ってた踵の痛み、今はどう?
何度も足踏みしてから、

大丈夫です

大丈夫ってことは痛くないってこと?

はい

ゼロ?

はい、なんともないです
今回は日常的に走ることに慣れているお子さんで走った後に急に踵が痛くなったというお話をご紹介しました。
日常的に毎日のように何キロも走っているお子さんで踵が痛くなったというストーリー、アキレス腱周囲の炎症や踵骨の疲労骨折などを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。しかし、お話をよく伺うと、発症したのは走っている最中ではなく、走った後しばらくして急に激痛で始まったというところがこれらの疾患ではない何かであることを思わせるポイントでした。国際マッケンジー協会認定セラピストの皆さんでしたら、私と同じように「腰椎かな?」とピンときた方も多いのではないでしょうか。
これまでにも踵の痛みが腰椎のスクリーニングで良くなってしまったお話はいくつかご紹介したことがありますが、少なくとも私自身が評価した踵の痛みを訴える患者の半数以上は腰椎に対する伸展または屈曲方向への介入で症状は軽減または消失しています。
踵の痛みで足底腱膜炎やアキレス腱周囲炎などの診断で踵の治療を受けているけどなかなか治らないという方、一度はお近くの国際マッケンジー協会認定セラピストの在籍している施設での評価を受けてみられることをお勧めいたします。