case_303 左大腿つっぱり

正座をする時の左大腿前面がつっぱるような違和感

整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもあるがどのようにマッケンジー法(MDT, Mechanical Diagnosis and Therapyとも呼ばれます)による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は左大腿の違和感で来院した50代女性のお話です。

事務系のお仕事をしていますが、じっと座っているわけではなく結構動き回ることも多い職場のようです。1年ほど前にこれといって思い当たることもなく左膝の内側の窪みあたりが痛くなりました。だいぶ前のことなので記憶が曖昧ではありますが、走り出す時などに痛かったようです。いつしかさほど気にならなくなりそのまま何ともない状態が続いていたのですが、3ヶ月ほど前から正座をすると左大腿前面がつっぱるような違和感を感じるようになり、正座を長く続けられなくなりました。
整形外科にかかって単純X線写真では膝の骨に異常はなく、膝の問題いといわれ、膝蓋骨のテーピングの指導など受けたようですが、受診した時には膝の症状は感じておらず、左大腿の症状が気になっていたものの、指導されるままにテーピングをしていましたが、正座する時のツッパリ感が改善することはなく、お知り合いの人から勧められて今回の受診となりました。

何ができなくて困っているのかを伺うと、もともと正座の生活になれているようで、正座ができないのが一番の問題のようです。

椅子に座っている状態では左膝を中心に左大腿から下腿外側まで違和感のようなしびれ感のような症状が少しあるようです。

まずは姿勢矯正して保持してみましたが、症状にはあまり変化はありません。

次に座位のままでしっかりと胸椎・腰椎を伸展する動作を10回繰り返してみます。

佛坂
佛坂

左膝の違和感はいまどうでしょうか?

A子さん
A子さん

今はないですね…背中を動かすのに集中していたからかしら…

まだはっきりはしませんが、脊椎に関連ありそうですから、腰椎の反復運動を行う前に診察台の上で一番のお困りである正座をしてもらい左大腿の症状をうかがいます。

A子さん
A子さん

やっぱりつっぱります

佛坂
佛坂

いつもと同じ感じですか?

A子さん
A子さん

ですね

立っていただき、立位での腰椎伸展のやり方をご説明し、10回伸展運動をした後に、もう一度正座してもらいます。

A子さん
A子さん

あれっ、さっきよりしやすくなりました!

もう一度立っていただき、さらに10回立位での腰椎伸展運動を繰り返してからもう一度正座してもらいます。

A子さん
A子さん

普通です!

佛坂
佛坂

普通っていうのは、つっぱりがないってこと?

A子さん
A子さん

ですね、普通に正座できます!

佛坂
佛坂

膝のテーピングは要らなそうなのでやめていいでしょう

(EIS abolish つっぱり感 B)

宿題にするエクササイズの説明をして初回評価を終了しました。

患者さんが何にお困りなのかを最初に聞き違えてしまうと、決してゴールにはたどり着くことはありません。マッケンジー法(MDT, Mechanical Diagnosis and Therapyとも呼ばれます)では問診に時間をかけます。その中で患者さんの症状を確認するだけではなく、患者さんの求めていることは何なのかを明確にして目標をすり合わせ、症状改善のために患者さんとの共同作業を進めていきます。