肩の痛みで調理の仕事をやめようかと考えています
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は両肩と腰の痛みがある60代男性のお話です。
数十年来、自営業で調理の仕事をしてきましたが、この数ヶ月、フライパンを返すときなど肩が痛くなってきて、朝起きたときに腰が痛いこともあり、半年後くらいに自分の誕生日が気たら仕事をやめようかと思っているそうです。
夜中にトイレに起きるときも腰痛が強く、体を起こすときに手をつくのも肩が痛いのでつきにくいとのことです。
座っている姿勢は猫背です。
肩が痛い動かし方があるかと伺うと、手を伸ばした状態で手のひらを上に返したり下に返したりしながら、
こうやってひねると肩の痛みが強いんです
痛みの点数は5点(考えうる最大の痛みが10点満点として)のようです。
お話をうかがっていて、腰の動きを確認すべく立ち上がっていただくと、
こんな感じでしばらく座っていて立ち上がると痛タタタってなるんですよ
立ってしまったあとに腰椎の可動域を確認すると、いずれも中等度の制限ですが、年齢的にみると極端に悪いこともありません。
そこで、座った状態で姿勢を整えて1分ほど保持してみます。
さっきと同じように立ち上がってみましょうか
すっと立てました
(姿勢矯正保持 B)
良い印象なので、今度はさらにしっかりと頚椎・胸椎を伸展させる運動を10回ほどしてからもう一度立ってみます。
今痛みはいかがでした?
だいぶ立ちやすいです!
(SOC 10回 B)
さらに10回、追加で動かした後に、
先程お伺いしたときに右肩が痛かった動かし方をもう一回やってみてもらえます?
何度か確認しながら、驚いたような様子で、
痛くないです!肩が痛くなってからこの痛みがなくなったのは初めてです!
エクササイズのやり方の注意点と姿勢の大切さなどご説明して初回評価を終了しました。
今回は脊椎をしっかりと動かすことで腰の痛みと両肩の痛みが同時に改善しました。
もちろん常にそうなるわけではありませんが、マッケンジー法で評価・治療を行う時には、患者さん本人が最も気になっている症状に集中して評価を進めます。そうすると、他の症状にも変化が現れることは決して稀ではありません。
あれこれと複数の動かし方を試すより、可能な限りシンプルに一つだけ選んでその反応をみることで、次に行うべきことも見えやすくなるのです。