case_263 背部痛

10年ほど続いている背部痛

整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもあるがどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は繰り返す背中の痛みがあり受診した70代女性のお話です。

10年ほど前に仕事を引退した後、小松菜の収穫の手伝いに通い始めて3ヶ月くらい経ったころ、右肩甲骨の痛みに気づきました。その後、徐々に痛みが強くなり、痛いときには右の肩甲骨の下あたりをグリグリと刺されるように痛くなってきました。5箇所ほど整形外科にかかって検査など受けましたが原因がわからないままで、処方された痛み止めでは、全く改善しなかったようです。

ある病院ではリハビリもす勧められるまま椅子に座って電気を当てる治療を受けたこともあるのですが、その座っている間がものすごく痛みが強くなり脂汗をかきながら耐えることをづづけていたそうです。その後も症状は変わりませんでした。
最初の頃は何をしていても痛かったのですが、あるとき痛いときには仰向けになって長くなっていると痛みが緩和されることに気づきました。それ以降、なにかしていて痛みがでてきたら、仰向けに寝るということを繰り返す生活が続き、長時間の外出ができず、特に人の話を聞きに行くような長く座っていないといけないことは何もできないまま何年も耐えてきたそうです。

痛みが強いときには、寒いときなどに首をすくめるような動作で頚部の右側に7点、肩甲骨の少し下のあたりの比較的狭い範囲にズキンと10点の痛みが響く場所があるようです。診察室では首の右側に張ったような痛みがありますが、右肩甲骨のあたりの痛みはありません。

座っている姿勢はやや猫背。しばらく姿勢を矯正して症状に変化がないかを伺いますが、あまり変化はないようです。

頚椎の可動域を確認すると、伸展が中等度制限されていて少しだけ右の肩甲骨のあたりに痛みというほどではない響く感じがあるようです。左側屈で右頚部に軽い痛みが再現されます。
座ったままで脊椎をしっかりと伸展して緩めるように動かすことを10回ほど繰り返してみます。

佛坂
佛坂

いま首の痛みどうです?

A子さん
A子さん

今はないですね

(SOC abolish B 右肩のハリ感消失)

効果が確認できましたので、このエクササイズを宿題にすることにしました。
次回の来院時までやることをご説明していると、

A子さん
A子さん

背中がまた少し痛くなってきました…

佛坂
佛坂

さっきのように姿勢を整えてみましょう

先程練習したように姿勢を整えてみます。
5秒ほどしてから伺いました。

佛坂
佛坂

いまどうです?

A子さん
A子さん

痛くないです

その場で再び症状が消失することを確認できました。

それから4日後。

佛坂
佛坂

その後、痛み具合はいかがでした?

A子さん
A子さん

良くなりました!

佛坂
佛坂

いつ頃から良くなった感じがありました?

A子さん
A子さん

この前こちらに来た日から、背中が痛くて横になることはなくなったんですよ

受診した当日から頚部の痛みと横になりたくなるような背中の痛みはかなり軽くなったと言われます。

A子さん
A子さん

早く相談しておけばよかった…

実はこの方が長年通っているかかりつけの内科からのご紹介だったのですが、この症状を内科で相談するのもと遠慮して相談せずにいたそうなのです。ふと診察のときに相談してみたところ、それならばと一度行ってみると良いとすぐに紹介してもらえたそうです。

エクササイズは気がついたらやっていたそうで、1日10セットどころではない頻度で「こまめに」実施できたようです。
エクササイズのやり方をチェックしてみます。

しっかりと背骨を伸ばしたときに、右肩甲骨のいつものところに少し違和感を感じる程度で、痛みはありません。その違和感も元の姿勢にもどるとすぐに良くなる程度です。

これからもエクササイズを続けていただくようにご説明し、卒業となりました。

今回は10年来の頚部痛と右肩甲骨のあたりの痛みがあり、多くの病院で原因がわからないまま治療も半ばあきらめていた方が、マッケンジー法により評価した受診の当日からほぼ症状は解決したお話でした。

もちろんこの方のように劇的に改善する方ばかりではありません。しかし、たとえ何年も続く症状であったとしても、場合によっては非常に速いスピードでよくなることもあるのだということを今回のお話からお伝えできれば幸いです。