右首筋の痛みから始まり、徐々に痛みが広がりました
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は首の痛み、頭痛、腰痛で相談にみえた40代女性のお話です。
事務職でPC作業が多いのですが、座りっぱなしではなく席を立ち他の部署へ行くこともあるような職場の環境です。
5日ほど前の朝、右首筋が痛いことに気づきました。前日まで普段と変わったことはなく、特に負担が増えたわけでもないようです。首筋の痛みは徐々に広がり、その後、両方のこめかみあたりまで痛くなりました。さらに痛みは腰まで広がりました。
痛みの程度はひどい時でこめかみは8点(考えうる最大の痛みが10点満点として)、右首筋は6点、右肩、腰あたりは10点のこともあるようです。
診察の時点ではじっと座っている状態で頚部、腰部に2〜3点、こめかみは触らないと痛みがないのですが、自分の指で押すと2点くらいの痛みがあります。
座っている姿勢はさほど悪いわけではないのですが、比較的デスクワークで下向きのことが多いようなので、まずはしっかりと姿勢を矯正して1分ほど。
今、さっきまであった痛みはどうです?
少し楽になりました
今の姿勢のままで、こめかみをさっきと同じように押して痛みをがどんな感じがみてもらえます?
あっ、今は痛くないです!
いい印象なので、そのまま頚椎の評価を続けます。
頚椎の動きを確認すると、左向き右首筋に2点の痛みが再現できることを確認しました。
先程の良い姿勢から、さらにしっかりと顎を引くことを10回。
大丈夫ですか?
はい、なんか体がポカポカしてきました
少し休憩してさらに5回追加してみます。
さっきの左向いて痛かったの覚えてますよね。もう一度左向いてましょうか
今は痛くないです!
立って歩いてもらいます。
だいぶ楽になりました
(RET 10回+5回 B)
初回評価はここまでとして、エクササイズを決めてフォローすることになりました。
その後、症状は速やかに軽快してしまったようですからその後のお話は割愛いたします。
痛みの部位が複数箇所あるとき、まずは患者さん本人がどの症状が最も気になっているのかをお伺いして、その症状を軽減できるよう評価を進めるのが基本です。それと同時にその症状がどの部位に関連しているのかを考えます。その際、私が参考にしているのは最初に体のどの部位のどのような症状から始まったかということです。
この方の場合、最初が首の症状だったというところに着目して、頚椎の評価を行ったところ、全ての症状が速やかに軽快しました。
もちろん常にこうなるという意味ではないのですが、複数部位の症状がある時にはこのような考え方もアプローチ法の一つの引き出しとして持っておいてよいように思います。