case_258 左肩痛

重い荷物を持ち上げてから左腕が上げにくくなりました

整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもあるがどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は半年ほど続く左肩痛で受診された60代女性のお話です。

営業で動き回るお仕事をしているアクティブな女性です。半年ほど前に重い荷物を左手でグイと持ち上げてから左腕が上げにくくなりました。

両手を上げていただくと、たしかに左手を上げるときに痛みがあり完全には手を挙げられない状態ですが、日常生活動作ではそこまで手を挙げるシーンがないようで、病院に行くのが遅くなったようです。

マッケンジー法では肩の症状であっても必ず頚椎から評価を行います。

特に首には症状はないと言われましたが、先に頚椎の可動域を確認します。いずれも多少制限がありますが、特に伸展するときに後頚部に痛みがあります。

左肩を前方挙上(前から手を挙げる)、外転(横から上に手を挙げる)するときに痛みがあり、いずれも160°で完全には挙上できないことが確認できました。

姿勢の整え方をご説明してしっかりと姿勢を矯正して1分。少し背中がきついくらいで特に問題はありません。

佛坂
佛坂

さっきと同じように手を上げてみましょうか

A子さん
A子さん

さっきよりすこしいいかな…

はっきりといいとは言えませんが、引き続き伸展方向の負荷をかけてみます。

頚椎・胸椎を中心にさらにしっかりと伸展してだらりと元に戻る動きを10回繰り返してみます。

佛坂
佛坂

もう一度、手を上げてみましょうか

A子さん
A子さん

あれっ、今は痛くない…

(SOC abolish B ROM↑)

可動域も左右差はまだあり、完全ではないのですが、先程より角度も改善しているのがわかります。

はっきりした改善がありましたので、このエクササイズを宿題にすることにしました。

それから1週間後。だいぶ手が上げやすくなったようです。

エクササイズの実施状況は、1セット10回くらいを一日3セットくらいと十分とは言えない状況ですが、少なくとも症状は改善傾向と言われますから、まずはどのようにエクササイズをしていたのかやって見せてもらいます。

まずは本日の症状をチェックします。
左肩挙上、外転とも160°でまだ3点の痛みが確認できました。

いつもやっているとおりにお約束のエクササイズを1セットだけやってもらい、終わったあとにもう一度お伺いします。

佛坂
佛坂

手を上げてみてみましょう

A子さん
A子さん

さっきより少しいいかな…

(SOC 10回 B?)

佛坂
佛坂

もっと良くするためにはどうしたら良いと思いますか?

A子さん
A子さん

こうやって手を上げるときに痛いのでストレッチしたらいいような…

先程痛かった手を挙げる動作をして、右手でさらにぐいと持ち上げるストレッチのような動作をして見せられました。

佛坂
佛坂

私だったら今やっているエクササイズをもっとやるでしょうね

これまでと同じエクササイズをもう少ししっかりとやるやり方をご説明して5回やってみます。

佛坂
佛坂

さっきのストレッチするときの痛みを確認してもらえますか?

A子さん
A子さん

あれっ、今はない…

(ER意識してSOC 5回 B)

体のある部位をストレッチすると痛くてそれ以上動かせないときに、その苦手な動きを克服するために痛いのを我慢してさらに伸ばそうとするストレッチ。体の状態に問題のない関節のストレッチであれば、そのようなやり方も間違っていないのかもしれません。しかし何らかのきっかけで動きが悪くなったとき、脊椎を整えることで四肢の痛みが取れて、その結果として可動域が改善することもあるのだということをこのお話を通じてお伝えできれば幸いです。