case_251 右膝痛

うつ伏せの施術で膝の違和感がでてきます

整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもあるがどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は一ヶ月ほど前に急に発症した右膝痛で来院した60代女性のお話です。

40年以上のキャリアをもつ保育士さんで、ここ3ヶ月ほどスポーツクラブに通って体を動かしているという比較的アクティブな方です。
思い当たることもないのですが、一ヶ月ほど前に右膝がすごく痛い時期がありました。今はだいぶ落ち着いているものの、しゃがみにくい感じがあります。時に整体に行くこともあるのですが、うつ伏せで施術をうけていると右膝のなんとも言えない違和感がでてくるようです。

膝の症状であっても、マッケンジー法では腰椎からスクリーニングをすることは、当ブログをご覧になってきた皆様にはもはや当たり前の事になっているでしょうか。この方ももちろん腰から評価します。

まずは腰椎の可動域を確認しますが、いずれの方向も制限なく動かすことが出来ます。

現在の症状をあれこれと確認してみますが、しゃがみ込み動作で少しだけ右膝の違和感を感じる程度です。

先程お話を伺っていて整体のうつ伏せで膝の違和感が強くなるというお話がありましたので、それを参考にうつ伏せになっていただき、伸展方向の負荷を少しかけてみることにします。

診察台の上でうつ伏せになった状態ではなんともありません。

まずは一回、特に問題がないことを確認してうつ伏せの腰椎伸展を続けます。
すると、5回目に伸ばしたあたりで、

A子さん
A子さん

右膝にいやな感じが出てきました

佛坂
佛坂

例の違和感?

A子さん
A子さん

そんな感じです

(EIL P右膝の違和感)

ここでストップして、今度は椅子に座っていただきます。
今度は座った状態での腰椎屈曲の負荷をかけてみます。

膝の症状が出ないかなど伺いながらトータル10回。

佛坂
佛坂

立ってしゃがんでみましょうか

A子さん
A子さん

今は違和感ないですね

(FISit B)

初回評価の結果、座って行う腰椎の屈曲エクササイズを宿題にしました。

それから5日後。
もともとは言われてませんでしたが、エクササイズを始めてから左膝の安定感が少し良くなったとのこと。
エクササイズは日中は座ってエクササイズが出来ず、朝夕くらいです。

今もまだしゃがみ込む時に右膝の突っ張り感があります。
お約束のエクササイズを5回やってみると、やはりしゃがむ時の突っ張りは改善します。
オプションを増やして立って腰椎を屈曲するやり方を試して特に問題ないことを確認し、このやり方も追加しました。

それから2週間。

膝についてはしゃがむときの不安感は全くなくなりました。
前回オプションとして追加した立ったままやる腰椎の屈曲がやりやすいと感じたようで、そちらを一日3〜4セットはできたようです。

エクササイズをチェクして、やり方のポイントを再度ご説明しました。

それから1ヶ月後。

立ったままでやるエクササイズは習慣化していて一日6セットは出来ていると言われます。
膝の症状については全く不安はなくなったようで、今後のエクササイズを続けることの重要性などの指導を行い、卒業としました。

今回は腰椎屈曲方向のエクササイズで改善する膝痛のお話でした。
経過は2ヶ月近くと長いように見えますが、エクササイズをどの程度できるのか、病院に行く時間がとれるかどうかは人それぞれです。
マッケンジー法で評価すると日単位で症状が変化する人が多いため、通常は数日〜1週間くらいの間隔で経過を見ることが多いのですが、お忙しい方は一ヶ月に1日来れる日があるかないかということもあります。
マッケンジー法ではセルフエクササイズの宿題を実施していただき、その結果どうなったのかというフィードバックをいただいて次にやることを決めるというプロセスを繰り返します。そのため、再来までの間隔が長いと次にやるべきことを決めるタイミングが少し遅れる分だけ卒業までに余計に時間がかかることがあるかもしれませんが、マッケンジー法により症状の改善する病態であれば、遅かれ早かれいずれは卒業できるでしょう。仮に月に一回しか来られない場合であっても柔軟に対応しつつ症状改善を目指すことができるのもマッケンジー法のメリットと言えるでしょう。


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