サッカー少年、試合が増えた後から両膝が痛くなりました
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は両膝の痛みで来院したサッカーが大好きな小学生のお話です。
一ヶ月くらい前、少し試合が増えたころから走っているときなどに両膝が痛くなりました。サッカー中に走っていると痛くなりますが、歩いているときや階段の上り下りなどはさほど痛みはありません。痛みが続くため、一週間前からサッカーは休んでいて、それからは少し良くなっているようです。
痛みはその時によって変わるようで、必ずしも両方痛いわけではなく、今日は右膝が痛みます。
今は立ち座りや足踏みなどでは痛みは全く感じませんが、しゃがむと右膝に3点(考えうる最大の痛みが10点満点として)くらいの痛みがあることが確認できました。左は痛くありません。
座っている様子をみると、今どきのお子さんらしく猫背のようです。
まずは姿勢の整えて1分ほどキープしてからもう一度確認します。
それじゃ、もう一度さっきみたいに立って、しゃがんだときの痛みがどんなか教えてくれる?
ゆっくりしゃがんで、立ち上がってから聞いてみます。
どう?
さっきより少しいいです
(姿勢矯正保持 B 2点)
まだはっきりといいとは言えませんが、良い印象です。
座る姿勢と姿勢矯正に対する反応を参考に、まずはうつ伏せになってしっかりと腰を伸ばす動きに対する反応をみてみることにします。
うつ伏せで、上半身だけを持ち上げる、そう、マッケンジー法の代名詞になって、その後独り歩きしてしまい、マッケンジー体操と呼ばれるようになった、あの動きになります。
まずは一回、楽にできているのを確認し、手をより手前について体をもっと高く上げ、さらにお腹をグーッと下げるような感じで負荷を強めにしてみて、問題ないことを確認し、トータル10回負荷を強めの伸展を続けてからもう一度立ってもらいます。
さっきしゃがんだ時の2点くらいの痛み覚えてるよね?もう一回しゃがんで同じくらい痛いか教えてくれる?
ゆっくりしゃがんで少し動かしたりして確かめてくれています。
どうだった?
痛くないです
痛くないって…全然?
全然痛くないです
(EIL w/sag abolish B)
方向性が見えましたので、うつ伏せで伸展するエクササイズを宿題にして初回評価を終了しました。
今回のお話、いかがでしたでしょうか。サッカー少年の走るときの膝の痛み…オスグッド病のような病名が真っ先に頭に浮かんだ方も多いのではないでしょうか。
これまでにもマッケンジー法・症例ファイルで何度も取り上げてきたのですが、お子さんの様々な四肢の痛みが脊椎に対する介入で良くなることは稀なことではありません。
最近、猫背のお子さんがとても増えているように感じていますが皆様の周りのお子さんについてはいかがでしょうか。
昔は背筋を伸ばして座ることを厳しく指導された時代があったのですが、その時代の人々も姿勢の良し悪しでなんらかのパフォーマンスの違いを感じていたからこそ、そのような指導がなされていたのでしょう。
時代が変わり、生活様式も大きく変わってしまいましたが、姿勢を整えることの大切さは今も昔も変わらないようです。
◆ Kindle版書籍のご案内 ◆
マッケンジー法で評価・治療した方々が、どのような経過で良くなっていったのかをご紹介しているブログ「マッケンジー法・症例ファイル」。掲載してきたお話の中から抜粋し、マッケンジー法で使われる専門用語には欄外に解説を入れ、文字だけではお伝えするのが難しかった特殊な体の動かし方についても挿絵を入れながらまとめ直した「マッケンジー法・症例ノート」全32話。
アマゾンKindleストアで販売中(Kindle Unlimited会員の方は無料)です。
整形外科医が自ら実践する
マッケンジー法・症例ノート(全32話)
全32話の概要をご紹介した小冊子はこちらリンクからダウンロードいただけます。