case_229 左腓腹痛

軽かった左腓腹部(ふくらはぎ)の痛みが段差を降りたとき激痛になりました

整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもあるがどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は左ふくらはぎの痛みで相談をいただいた50代女性のお話です。

職業は看護師ですが、比較的座っている時間の長いお仕事内容です。日常生活にはこれといって変わったことはなかったのですが一週間ほど前からなんとなく左腓腹部(ふくらはぎ)にちょっと足が吊りそうな違和感を覚えていました。数日して違和感から痛みになり、芍薬甘草湯(筋肉のけいれんを緩和する漢方薬)、湿布などを使用して少し改善したようだったのですが、朝、玄関の40cmほどの高さから左足をついて降りたときに激痛が走りました。以後、歩くときに左足に体重が乗ると左腓腹部の痛みが7点(考えうる最大の痛みが10点満点として)ほどあり、体重をあまり乗せられず、足を引きずって歩いている状態です。

痛みの部位を確認すると、左腓腹部に圧痛のある部位はあるのですが、押してもさほどひどい痛みではありません。

左足関節を背屈すると、同部の疼痛が誘発されますが、3点程度です。

立位では左足の荷重を避けるような立ち方で3点程度。

足踏みで左足に体重が乗るときの7点がはっきりとした症状として再現できます。

腰椎の可動域を確認すると、腰を左横に動かしにくく、同時に左腓腹部に響くようです。

(RSG 中等度制限 左腓腹部痛 P-NW)

日常生活の状況と急に増悪したときの状況などもあわせ、まずは腰椎をしっかりと伸展してみます。

佛坂
佛坂

足踏みしてみましょうか

A子さん
A子さん

さっきより痛くない感じですね…

佛坂
佛坂

さっきは7点でしたけど、今は何点くらい?

A子さん
A子さん

4点くらいかな

(EIS 10回 B 4点)

良い反応が得られましたので、さらに10回、しっかりと伸展します。

佛坂
佛坂

足踏みしてみましょうか

A子さん
A子さん

だいぶいいです!

佛坂
佛坂

何点くらい?

A子さん
A子さん

2点くらい

その後、うつ伏せでしっかりと腰椎を伸展する動きに対する反応、座っていることの多いお仕事なので、座ったままでできる座位での腰椎を動かす動きに対する反応も確認しましたが、これ以上のはっきりとした反応はありませんでした。

(EIL w/sag 10回 NE、SOC 10回 NE いずれも足踏みでの痛み2点)

最初によい反応がはっきりと確認できた立位でのエクササイズと、お仕事のあいまに座ったままやれるという意味で座位でのエクササイズも加えて初回評価を終了しました。

それから3日後。

もう忘れるときもあるくらいで、逆に油断して玄関降りるときにぽんと左足からついてビリっと痛みが走ることがあるくらいに改善しています。

さらに2日後。

もうほとんど良いのですが、0.5点くらいの痛みを意識することはあるようです。

エクササイズの頻度はどうかと尋ねると…症状がよくなってきて明らかにエクササイズの回数が減っています。

この方のように、速いペースで症状が改善し、日常生活で気にならない程度になると、途端にエクササイズをする頻度が減ってしまうことはよくありますし、自分ももし同じ状況ならそうなるかもと思います。

このような時、皆さんはどうするのが良いと思いますか。

といっても、答えは一つではありません。

もちろんエクササイズの頻度をもとと同じくらいに増やすのも一つの選択肢だと思います。
しかし、ひょっとすると今の減った頻度のままで適当にエクササイズを続けるだけでも症状は良くなってしまう可能性だってあります。

仮にこのままエクササイズをやめてしまったらまた悪くなることだってあるでしょう。
しかし、長い目で見るとそれを未然に防ぐのがその方にとって必ずしも良いこととは限りません。

皆さんもご経験はありませんか?

ある失敗をしたときに、それをどうしたら良かったのかと反省して、自分でどうすべきかを考えて最終的に成功するという経験をしたときに、その記憶はより鮮明になり、生活習慣すら変えることが出来たこと。

あることをして、あるいはやめてしまって症状が増悪したとき、その時の何が悪かったのかに気づいていただくのも症状のセルフマネジメントという観点から大切な経験だと考えています。


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