数年前から右膝のチクチクするような痛みがあります
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は右膝の痛みで来院した70代女性のお話です。
スーパーの野菜担当の仕事を30年以上続けています。重いものを抱えることが多く、数年前から右膝のチクチクするような痛みを意識するようになり、歩くときに右膝をかばうようにして歩いています。ときに両手指のしびれもあり、これについては自分では腱鞘炎だと思っているとのことです。じっと座っている時にはなんともないのですが、立ち上がって歩くと痛みます。じっと座っている時にはなんともないとのことですが、よくよくお伺いしてみると、ときにじっと座っている時にも痛いことがあるようです。この座っている時にも痛いことがあるという情報は、これまでマッケンジー法・症例ファイルをご覧頂いている皆さんにはピンとくるところかもしれません。整形外科で月に一回の注射を受けていて、けっこう強い注射と説明されていますが、あまり効いている気がしません。以前、痛み止めも処方してもらったことがありますが、全く効きませんでした。仕事柄、腰も痛いのでコルセットを自分用に作ったのですが、動きにくいためほとんどつけていないようです。
単純X線写真では腰椎の変形があり、骨密度がやや低い印象ですが、体を動かすことには問題なさそうです。
現時点での症状を確認します。座った状態から立ち上がっても痛みはありません。足踏みしてもらうと右膝に10点(考えうる最大の痛みが10点満点として)の痛みがあると言われますが、さほど右膝をかばった感じもなく、見た目はさほど痛くないように見えます。
マッケンジー法では膝の症状でも姿勢を確認します。
やや猫背の姿勢ですから、まずは姿勢を矯正して1分ほど保持してみます。
立って足踏みしてみましょうか
さっきより少し痛くないかも
さっきは10点でしたが、今は何点くらい?
8点くらいですかね…
(姿勢矯正保持 B?)
立ったままで今度は腰椎の可動域を確認します。
いずれの方向も中等度に制限されていますが、痛みは特に誘発されません。
足踏み8点の症状をベースラインに評価を続けます。
腰を折り重いものを抱える仕事という情報と姿勢矯正の反応などを参考に、まずは立ったままでしっかりと腰を伸展するやりかたを説明しまずは1回、特に問題のないことを確認して全部で10回伸展してみてからもう一度足踏みしてみます。
響かなくなりましたね…
(EIS 10回 B)
良い印象ですから、さらに5回。
足踏みの響き具合どうですか?
痛くないです!
全然痛くない?
今は……痛くないですね…
何度も足踏みして確認しましたが、痛みは消えたようです。とても良い反応が得られましたので、エクササイズの宿題について確認し、初回評価を終了しました。
それから1週間後。
エクササイズは一日6〜7セットはできているようです。
右膝のチクチクする痛みはというと…
ところで、右膝のチクチクする痛みはその後どうです?
おかげさまであれから全然痛くないんですよ。早く紹介してもらえばよかった…
1週間前の初回評価以後、痛みは完全に消えてしまったそうです。
内科の疾患でかかりつけの先生にたまたま右膝のことを話したことで今回の紹介につながったそうです。
我慢強い人は、少々痛くても生活できているとそんなものだろうと思っている人は意外に多いように思います。もう何年にもなる痛みだから仕方ないと諦めずに、何でも相談してみるものですね。
解決法は意外に簡単な自分でやれるような事なのかもしれません。