痛み止めを飲んでいると多少はよいようですが…
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は左殿部から左下肢にかけての痛みが続いているという50代女性のお話です。
4ヶ月ほど前からだんだんと左下肢が痛くなりました。近くの整形外科に行ったところ、プレガバリン(商品名リリカなど)75mgを寝る前、トラマドール塩酸塩/アセトアミノフェン配合錠(商品名トラムセットなど)一日3回など処方受けていて、薬が効いてはいるようで、トラムセットを飲み忘れたりすると、やっぱり痛いという状況が続いています。どういう診断でそのような処方をされたのかうかがうと、実はプレガバリンは脚の痛み以前から、なぜか首の痛みで処方されていたものだそうです。
さて、お話しているときも左の下腿に軽い痛みがあります。
まずは姿勢をしっかりと矯正して保持してみます。
少しピリピリする感じがひどくなった感じです…
また姿勢をもとに戻すと先ほどと同じ程度の痛みに戻ります。
腰椎の可動域を確認すると、いずれも軽度の制限がありますが、伸展するときに痛みが強くなるわけではないことがわかりました。
続けてまずは腰椎を伸展する動きを繰り返してみます。
脚の痛み具合はどうです?
少し響きますけど大丈夫です
もし痛みがどんどん強くなるようなことがあったら教えて下さいね
そのまま続けてみます。
すると、続けているうちに先程のような下腿に響く感じは軽くなってきました。
今は痛みはどうです?
痛くないです
(EIS P 左下腿痛 反復とともに軽快 B)
いつも立ってエクササイズができる環境ではないようなので、座ってしっかり背骨を伸ばす動きも確認してみます。
このやり方だと腰が少し痛いですが、脚には響きません
(SOC NE)
まだいいとも悪いともはっきりしない状態なのですが、こまめにやれるやり方として座ってやるエクササイズを宿題にすることにしました。
なお、プレガバリンについては現時点で効いているとは思えない病態ですので、やめることをおすすめしました。
それから4日。
症状は少しいいかもという程度ですが、少なくとも悪いことは何も起こっていないようです。
エクササイズをチェックしてみます。
お腹を前に出して、胸を張って顔を下に向けて…だったかな
再度、ポイントをご説明してやりかたを修正してみます。
このやり方だと痛くないです!
それから一ヶ月ほどした頃。
まだ痛み止めは一日3回飲んでいますが、だいぶ良くなっていて、痛み止めの効いている時間が長くなったようで、最近では痛み止めを飲み忘れることもあるくらいのようです。
痛みが軽くなってエクササイズも前より積極的に、回数も多くできているんです
聞けば一日10セットはやれているそうで、今現在は痛みはありません。
症状は徐々に良くなっているという実感がありますから、このまま宿題は変えずに経過を見ることにしました。
それから4週間後、初診での評価開始から2ヶ月になります。
痛み止めは飲まない日が増えてきたんですよ!
以前は一日3回飲まないと痛かったのが、痛みが軽くなってきて、飲まずに済む日が増えてきたようです。
意外と早く良くなったって思いました
4ヶ月ほども続いていた痛みのためにプレガバリンやトラマドール・アセトアミノフェン配合剤の併用が必要だった症状がマッケンジー法による評価・治療を開始してから2ヶ月ほどで痛み止めを忘れるくらいになってきたのですから、ご本人にとってはかなり速いペースで良くなった感じなのでしょう。
数回のフォローでかなりエクササイズを習慣化できていますから、一旦卒業にしてみようと思います。
もしエクササイズ続けてても、治り方がが頭打ちになったらどうします?
エクササイズをしっかりやります
そうですね!自分でやってるつもりでも、いつの間にかやり方がゆるくなってないかと確認してみるといいですね
マッケンジー法では必ずしも症状がゼロになることを目指しているわけではありません。
ご本人が痛いときにどうしたら良いのかわかっていて、自分で対処できるようになっていればわざわざ病院に行くことはないと私は思うのですが、皆さんはどうお考えになるでしょうか。
痛みのセルフマネジメントができること……これも卒業できる条件の一つと考えています。