家事以外はあまり体を動かすこともない生活を送っています
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回はかかとが痛いという40代女性のお話です。
主婦で家事以外には体を動かすこともなく、少々運動不足かなと感じています。
1週間ほど前に左下腿の遠位外側に少ししびれたような痛みがあったのですが、すぐに良くなったので気にしないでいました。
3日前、急に左かかとに痛みを覚え、以後かかとをつくと痛いのでかばうように歩いていましたが、よくなりません。
診察室では座っている状態で踵を床に打ち付ける程度でも痛みが響きます。
踵の症状なのですが、マッケンジー法では…やはり腰から評価をします。
ちなみに腰椎の単純X線撮影では軽度の側弯を認めますが、体を動かして問題になるようなものはありません。
まずは姿勢を矯正してしっかりと保持して1分ほど。
さっきの踵を床にトントンするのをやってみましょうか
さっきより痛くないような…
立ってみます。
足踏みは?
これも軽いですね
さっきは5点って言われましたけど、今は何点くらい?
3点くらいかな…
(姿勢矯正保持 B)
立ったままで腰椎の動きを確認します。いずれの方向も中等度に制限されています。
体が硬いんです…
どうやら全く運動していない様子です。
いずれの方向も制限されてはいるものの、先程の姿勢を整えて良い反応が得られたことと、日常生活状況なども考えて、まずは立ったままでしっかりと腰椎を伸展する運動をやってみます。
最初はとてもやりづらそうだったのですが、回数を重ねていくと徐々に伸ばせていくのがわかります。
トータル10回おわったところで確認してみます。
もう一回、足踏みしてみましょうか
あれっ、痛くないかも…
ゼロ?
ゼロじゃないけど、今は違和感くらいで痛くはないですね
(EIS 10回 B ROM↑)
家事をする以外はほとんど座っていたというこの女性、運動不足とかかとの痛みの関係、皆さんはどう思われましたか?
一般的に現代人の日常生活では座ることが多いのではないでしょうか。座る(曲げる)と立つ(伸ばす)とでそれなりに動かしているようにも見えますが、よほど気をつけていないと、たった状態からさらに腰を反らすところまでしっかりと動かす動作は日常生活の中にはほとんどありません。
これまでにも、腰の症状ではなく、股関節、膝関節、足関節など一見すると腰とは関係のない部位の痛みのように見えても、腰に一定の運動負荷をかけることで良い反応が得られたお話をご紹介してきました。もちろん動かす方向は必ずしも反らすと良いわけではなく、曲げる方向が良いことも、横に動かすのが良いことも、捻ることで症状が軽くなる人もあり、それぞれで異なります。様々なパターンがありますが、この方についてはお話を伺った後に姿勢の矯正に対する踵の痛みがどうなったかという反応を参考に、腰椎をしっかりと伸展することを繰り返したところ、その場で症状は違和感程度にまで改善してしまいました。もちろん、そうならないこともあります。
その時は…?
マッケンジー法では、ある運動負荷を加えた場合の反応の良し悪しにより、次にどうすべきかを決めていきますので、その反応が良い場合にはその方向へ、悪い場合はその反応により次に進むべき道を選んでいきます。