以前かかった整形外科の病院では治らないと言われました
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は3年前から腰痛が続くという70代女性のお話です。
3年ほど前から続く腰痛で何軒かの整形外科、整骨院など人がいいというところにあちこちとかかったがどこで受けた治療も効果がなく、ある整形外科では治らないと言われたこともあります。
マッサージを受けるとその時は気持ち良いのですが結局その後の腰痛は変わらないという毎日を過ごしていました。
先日、めまいがして、めまいの治療で有名なある内科医院にかかったとき、自分のベッドからの起き上がりから歩き動き具合を見て、めまい治療をした先生にどこか痛いのかと尋ねられ、以前からある腰痛のことを話したところ、それならばと紹介されたという経緯があります。
単純X線写真では腰椎すべり(L4/5)がありますが、機能的には問題のないレベルです。
診察室で椅子から立ち上がっていただくと、腰の右側に5点(考えうる最大の痛みが10点満点として)の痛みがあります。
座っている時の姿勢はやや前傾で猫背の悪い姿勢なので、まずは姿勢を矯正して1分ほど保持してみます。
もう一度さっきと同じように立ち上がってみましょうか
さっと立てました!
先ほどまであった痛みはまったくなかったようです。
立位での腰椎の動きはそれなりに制限はされていますが、動かして痛みが強くなることはありません。
姿勢だけで経過をみても良さそうではありますが、これまでの猫背の姿勢を矯正する意味でもしっかりと動かしてみることにします。
座ったままで背中を出来るだけそらして、またもとに戻る動作を5回。特に腰痛が強くなることは無いようです。
もう一度立っていただき、痛みが無いことを確認しました。
(SOC 5回 NE)
良い姿勢を意識した生活を送ることと、座位での脊椎の運動を宿題に。
それから一週間後。
とても調子良いようです。
以前の立ち上がるときの痛みが何だったんだろうというくらい、立ち上がるときは何ともなくなりました。
今は長く歩いているときとか、草取りするときなどに少し腰が痛いことがあるくらいです。
草取りしているときは姿勢が悪いからでしょうかね?
そこに気づいていれば大丈夫です!
そうなんです。これまではなんとなく腰が痛いと思っていただけなのですが、今は「ひょっとしたら姿勢?」と意識できるようになっていることが大きな進歩と言えます。
あの日、めまいがして本当にラッキーだったと思ってます!
たしかに、ものは考えようとはこのことですね。今回、めまいがしてかかった内科の先生が腰痛ならとご紹介くださったことで、一週間前の最初に診察した時から立ち上がるときの痛みが消えてしまいました。
今回のご経験から、同じような症状のあるというお友達をご紹介したいとお話されましたが、マッケンジー法は魔法ではありませんし、同じ腰痛といってもその病態は様々なので、皆さん同じように治るわけではないことはお伝えいただくようにお話しています。
とはいえ、3年ほども続いていた腰痛が1週間で良くなるなんて…ご本人も驚きが隠せません。
これまでにもご紹介してきましたが、何年も続く症状であっても、それが治るのか治らないのかはレントゲンなどの検査所見でどんな異常があるかによって決まるのではなく、その方に適切と思われる運動負荷をかけてみて、それに対する反応を見てみないと何とも言えないのです。
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