case_207 左膝痛

スクワットをした翌日に左膝が痛くなりました

整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもあるがどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は左膝が痛くて来院した60代男性のお話です。

実はこの方、だいぶ前に腰痛でお見えになったことがあります。その際には、花見で5時間ほど座りっぱなしで、その後から立ち上がるときに腰痛になったということでした。
事の起こりからお察しいただけるかもしれませんが、腰椎の伸展方向のエクササイズであっという間に良くなってしまいました。

さて、今回は左膝の痛みです。お伺いすると、最近のことではなく4〜5ヶ月前にスクワットをした翌日に左膝が痛くなったそうで、以後左膝がときに痛いことが続いています。
最初は全体的に痛かったのですが、今は左膝の内側に押したら少し痛む場所があります。

痛みはあまり強くないのですが、診察の時点でも左膝の内側を押すと2点(考えうる最大の痛みが10点満点として)の痛みがあることを確認できました。

膝の症状ですが、マッケンジー法では…そう、腰の評価から始めます。

座っている時の姿勢は悪く、まずは姿勢を矯正して保持すること1分。

佛坂
佛坂

痛いところをもう一度押してみましょうか?

B男さん
B男さん

さっきより少し痛くないかも…

はっきりとはしませんが、評価を続けます。

腰椎の可動域はとくに制限もなく、腰も膝も症状はありません。

今回の症状が起こったときのお話など参考に、まずはしっかりと腰椎を10回伸展してみます。

佛坂
佛坂

もう一回、膝の痛いところを押してみてもらえます?

B男さん
B男さん

今は……痛くないです!

今回は腰椎を伸展すると良くなるタイプの膝の痛みだったようです。
これまでにも症例ファイルでご紹介した膝の痛みの患者さんには腰椎を伸展したら良くなるタイプの方が多かったのを覚えておられる人もあるでしょうか。

膝が痛いときには必ず腰椎を伸展したら良くなるのでしょうか?

答えはノーです。

では、同じ人ならいつも腰を伸ばすだけでよいのでしょうか?

……これもまた答えはノーです。

実はこの方、前回の腰痛からさらに1年ほど遡るころ一度腰痛で来られたことがありました。詳細は省きますが、その際には腰をしっかりと屈曲すると良くなるタイプの腰痛だったのです。
それが、1年ほどして再来された時は伸展でよくなるタイプの腰痛でした。

つまり、同じ人であっても、様々なタイプの腰痛になることもあるのです。

ではどうやってそれを判断すればよいのか…。

マッケンジー法では「このような症状に対してはこのエクササイズ」というような定型的なエクササイズの指導を行うことはありません。
常に過去にどういう状態だったということにとらわれずに、評価する時点で疑われる病態を予測し、メカニカルな負荷をかけて、それに対する反応を見て症状が改善する道を探していくのです。