寝返りすると痛みで目が覚める日が続いています
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は臀部の痛みで来院した80代女性のお話です。
一年ほど前から特に思い当たるきっかけもなく臀部が痛くなりました。それから2ヶ月ほどした頃に、バスに乗っていて握り棒につかまり損ねて転倒したことがあり、それから症状が悪くなったようです。症状は座っていて立ち上がるときに強いようですが、洗濯物を干す動作でも痛みが強くなります。
ご高齢ですが何でもご自分でなさるようで、とても活発に動く毎日のようです。
腰椎の可動域検査では立位での伸展が中等度に制限されていて殿部に痛みが再現されます。
姿勢を矯正して1分ほど保持してみますが、痛みは誘発されません。
伸展動作で症状が誘発されているようですので、まずは屈曲方向の負荷をかけて反応を見てみます。
座った状態でしっかりと屈曲してからまたゆっくりもどることをまずは1回。
痛みはどうでした?
戻るときにお尻に少しビリっときました
特に症状は残っていませんので、さらに4回、トータル5回同じ動きを繰り返してみることにします。
どうです?
戻るときに少しビリっとしますね…
少なくとも症状は悪くはなっていないようです。
さらに5回続けてみます。
お尻にビリっと来る感じ、どうでした?
今度は少し軽かったです
症状としてはあまりはっきりとした変化というわけではないのですが、日常生活の中での症状の起こるタイミングもあわせて考え、まずは座って行うエクササイズを宿題にすることにしました。
(FISit 5〜10回/セット こまめに)
それから4日後。
エクササイズは毎日何時に行ったかをきちんとメモを残していて、毎日10セット程度しているのがわかります。
エクササイズを始めてからの症状について伺うと、昨日すごく痛く、手持ちの痛み止めを飲んだが効かず、お孫さんが少し殿部をおさえてくれてから少し楽になって休まれたそうです。
ところが、今朝から痛みがだいぶよくて、あれこれ動き回ったのですが少し太もものおしりあたりが痛いくらいで、以前からすると痛みがだいぶ改善しています。
エクササイズのやり方を確認すると、きちんと丁寧にできているのがわかります。引き続き同じエクササイズを続けてもらうことにしました。
それから3日後、初診から7日後。
夜の寝返りが痛みがなくなってきてよく寝られるようになってきたと嬉しそうに話されます。
そして初診から25日。
夜の寝返りが痛みなくよく寝られるようです。長く歩くとまだ多少痛むのですが、物干しなどの作業もだいぶできるようになったようです。
これからもがんばります!
まずは夜寝られるようになるというのは本当に嬉しいことでしょう。
さらに、この方のようにもともとアクティブに動き回る人にとって、日常生活の中でも出来ることが一つづつ増えるという事もエクササイズを続ける大きなモチベーションになるのは言うまでもありません。
マッケンジー法はお薬以外の方法で自分の症状を改善できることがあれば頑張ってみたいという考えの方にとても相性の良い健康法とも言えます。