半年以上続いている左手の痛み、手術はリスクが高いと言われました
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は左上肢の痛み、両手のしびれがあるという80代男性のお話です。
8ヶ月ほど前から、後頚部痛、両手のしびれ、歩行時のフラつきなどを自覚するようになりました。
お近くの整形外科にかかり治療を受けてきたのですが改善しないため、3ヶ月ほどして脊椎外科の手術も行う大きな病院に紹介されました。しかし、手術はリスクが高く、手術はしないで痛み止めなどで経過をみることになったそうです。
痛み止めとしてプレガバリン(先発品商品名:リリカ)150mg2☓で処方されたこともあったのですが、症状があまりかわらないため痛み止めはやめてしまいました。
手術以外の治療はないものかと考えている時にお知り合いからマッケンジー法のことを教えられ、受診してみました。
手先に不意にものがあたったときにビリっとするようで、特に夜中に目が覚めた時に左手を用心して動かさないと強い痛みがあったそうで、そっと腕の置き場所を探すように恐る恐る動かしていたようです。
この一ヶ月ほどに振り向き動作もしにくくなったことを意識しています。
今は、どのあたりが痛みますか
手を触って確認してもらいます。
今は…こうやって触っても痛くはないですね……不意に当ったりする時にビリっと来るんです
左手指は少し腫れぼったく、動きは麻痺のため十分には動かせません。両前腕の遠位から手にかけてのじんじんしたしびれ感は今もあるようですが、現時点では痛みについては再現できません。
座っている姿勢は、猫背で頭が前に出た姿勢です。
そこでまずは姿勢を矯正して保持してみます。
すこし左手に響く感じがありますね…
姿勢を楽にすると元通りという感じです。
頚椎の可動域はいずれの方向も重度の制限があります。
大きな負荷をかけるのは難しい状態と判断できましたので、まずは出来る範囲で背骨を伸ばす動きをやってみます。
特に変化はみられません。
(SOC, NE)
とくに悪い反応は無いことが確認できましたので、とりあえずこの背骨を伸ばすエクササイズを宿題にしました。
それから7日後。
あの日から夜の痛みがなくなったんですよ!
一週間前に来院した初日以来、それまで夜中に目が覚めたときに痛くないポジションを探していたのが全く無くなりとても喜んでおられます。
また、左手の腫れぼったさも軽くなってきた実感があります。
エクササイズはかなり頻回にしているようです。
エクササイズをチェックしてみます。
自分なりに工夫して、しっかり伸ばすところを少し長めにこらえて頑張っているのがよくわかります。
数日したころに右向きがしやすくなったのに気づいたんですよ
頚椎の状態が改善すると、首の回旋動作がしやすくなることはよくあります。
以前にもプレガバリンが投与されていたような痛みがエクササイズで良くなった方のお話をご紹介したことがあります。同じ神経痛であっても、本当にそのお薬が必要なのか…。
それは運動に対する反応を確認してみないとなんとも言えないのです。