一年ほど前に右脚の付け根の痛みで来院したことがあります
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は、右膝の痛みで来院した50代女性のお話です。
バドミントン、ビーチボールバレーなど楽しむアクティブな方で、一年ほど前に右脚の付け根の痛みで来院したことがあります。その際にはマッケンジー法で腰椎からスクリーニングし評価した結果、腰椎の屈曲エクササイズで症状は改善してしまいました。
それから一年ほどして、今回は右膝の痛みのご相談にみえました。
2〜3年ほど前に右膝が腫れて痛くなり、お近くの整形外科にかかり、単純X線写真では異常なく、水も溜まっていないし問題ないと言われてその後自然に良くなったことがあります。半年ほど前からバドミントン、ビーチボールバレーなどをしたあとに右膝に軽い痛みを覚えていたのですが、その後すぐに良くなっていたので気にしていませんでした。2ヶ月ほど前から少し症状が悪化し、スポーツの後の症状が長引くようになり来院しました。
階段昇降で6点(考えうる最大の痛みが10点満点として)、現在は歩行時に2点程度。立ち上がりなど悪いようです。
姿勢が悪いため、姿勢を矯正して1分ほど保持してみます。
もう一度、立ち上がってもらいますが、右膝にビリっとした痛みがやはりあるようです。
腰椎の可動域を確認すると、腰を横に動かす動きを確認しているときに、
今は右のお尻が痛いですね
(LSG Produce 右臀部痛)
以前は右脚のつけねあたりが痛かったときに腰椎屈曲で良くなったということもあわせ、まずは屈曲方向を確認してみることにします。
以前やっていた体操覚えてます?ちょっとやってみましょうか
さすがに身体を普段から動かしているだけあり、以前やっていた腰の屈曲エクササイズも上手にできます。
さぁ、立ってみましょう
あっ、ビリってこなかったです!
(FISit 10回 B)
もう10回繰り返してから立ち上がってみますが、もう何ともありません。
前は脚の付け根で、今回は膝だったんですが、やることは同じなんですね!
右脚の付け根が痛いことと右膝が痛いこととは一年ほど隔てて現れた症状でしかも場所も違います。
以前は腰椎の屈曲エクササイズで良くなったので、今回もそうなると決まっていた訳ではありません。可動域検査や姿勢保持検査などのちょっとした反応と以前の経過も参考にして最初に腰椎の屈曲を選んで以前と同様のエクササイズを試みたところ、症状が改善したというだけです。
ではもしそうならなかったら?
今回はたまたま以前と同じ腰のエクササイズで膝の症状が改善しましたが、もちろんそうならないこともよくあります。例えば、以前は腰椎の屈曲エクササイズで良くなっていたのに、今回は腰椎の伸展エクササイズで良くなるなんていう事も稀ではありません。
時々お話していますが、マッケンジー法では四肢の症状であっても必ず脊椎からスクリーニングします。このルールに従い、お伺いした様々な情報と評価の際に見られた反応をみながら、脊椎の関連性が否定的と判断された場合は、次にその痛みのある部位の評価を続けます。
これといったきっかけもなく同じ脚の別の部位が痛くなった時、今回のような事もあることを一つのお話としてお伝えできれば幸いです。