股関節にグズっとした感じを覚えてから左股関節が痛くなりました
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は左股関節の痛みがある40代女性のお話です。
トランポリン、自転車などの趣味があるアクティブな女性です。3日前に60cmくらいの柵を右足を上げて乗り越えようとしたところ、左股関節にグズっとした感じを覚え、以後、左股関節の痛みが続いています。しゃがむ動作で痛く、体の向きを変えるときもロボットのような動き方をしないと痛みが走るため、意識して向きを変えるようにしています。
単純X線写真では、腰椎に軽度の辷り(すべり、腰の骨のずれ)がある程度です。
座ると痛いので、立ったままの状態でお話をうかがい、そのまま腰の可動域検査を行います。
腰椎の屈曲(前かがみ)は柔らかく左股関節は痛くありません。
伸展(腰をそらす)すると左股関節に8点(考えうる最大の痛みが10点満点として)の痛みがあり、ほとんど腰を伸展できません。
腰を左にずらす動きで3点、右にずらす動きで1点の痛みがあります。
まずは動かしやすい方向に動かしてみることにします。
立った状態でお尻を壁につけて、腰を曲げる前屈の動作をまずは1回。
あっ、ちょっと痛いですね……
戻ったら大丈夫?
はい
続けてもいい?
少し痛みますが、続けても問題ないレベルのようなので続けます。
今はさっきの痛みどうでした?
今度は全然痛くなかったです!
2回目は痛くありませんでした。
そこで同じ動きをトータル10回やってみます。
ちょっと歩いてみましょうか
え〜〜っ!痛くないです!
ゼロ?
少しだけジーンとするくらいで痛くないです
(FIS 10回 B)
太ももを何度か上げながら、
さっきまでこうやって太ももが上げられなかったんです
この立った状態での屈曲エクササイズを宿題にしました。
それから2日後。
もう全くなんとも無いです!
初日は寝る前にもやって夜中に起きたときにひょっとして朝痛くならないようにと夜中にもやって寝たら、昨日は一日なんともなかったようです。
それでもお約束なので1時間に1セットくらいやったと言われますから、頑張りやさんですね。
腰、股関節の可動域を確認してみると、いずれの方向にも全く可動域制限なく、伸展を深くしても全く症状はありません。
患者さんの中には、座る動作が痛くてできない方もいらっしゃいます。
そのようなときには立ったままでお話を伺い、そのままできる動作を確認し、その動きの中で症状がどのように変化するかを評価して症状改善を目指すこともあります。
この柔軟なアプローチができるのもマッケンジー法の優れているところだと考えています。