ボールを投げていて右肩がグキッとしてから痛みがあります
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は右肩の痛みで来院した10代男児のお話です。
学校でボールを投げていて、右肩にグキッとした違和感を覚えた後、右肩を回すのが痛くなりました。
背中の方に手を回す動作も痛みます。
ボールを投げるときに肩にグキッという違和感があった後の肩の痛みですが、マッケンジー法による評価では四肢の痛みは必ず脊椎から評価を開始します。
肩の場合は頚椎を中心に評価を行うことになります。
肩をぐるぐる回す動作で痛いようですが、手を背中に回す動作以外は可動域は左右差ありません。
右手は腰のベルトのあたりまでしか届きません。
頚椎の動きには制限はなく、右肩にも響いたりしないようです。
座っている姿勢は猫背でダラリとしています。この姿勢を矯正して1分ほど保持してから、もう一度、背中に手を回してみますが、これは良くも悪くもありません。
続いて、姿勢の悪さを参考に、頚椎の伸展方向の評価から開始します。
可動域は良好で、通常、部活では体操をやっている身体能力の持ち主なので、伸展のやり方を説明してから、最初からしっかりと5回伸展してみます。
あっ、さっきよりしやすいです
少しだけ腰の上の方に手が回ります。
さらに負荷を上げて5回。手はさらに腰から背中の方に上がるようになっています。
さっき痛かった肩を回すのやってみようか
だいぶいいです!
頚椎のエクササイズで十分な改善傾向が見られましたので、初回の評価はここまでにして、姿勢と頚椎のエクササイズを宿題にしました。
それから3日後。
まだ引っかかり感が少しあるもののだいぶよくなったようです。
右手を背中に回すのもだいぶ上に上がるようになっています。
姿勢は気をつけているといいます。エクササイズは2セット/日とこまめには出来ていません。
右肩をぐるぐる回してもらい、わずかに引っかかり感が再現できることを確認しました。
エクササイズをチェックしてみます。
エクササイズは上手にこなしています。5回しっかりと頚椎の伸展エクササイズを行った後、もう一度、右肩を回してもらいます。
引っかかりが軽くなりました!
(RET+EXT w/op self B)
それから3日、初診から6日目。
もう治ったと右肩をぐるぐると回してみせます。
右手を背中に回すと、もう少しで左と同じくらいというところまで回せています。
もちろん姿勢も気をつけているようです。
これからも良い姿勢を意識して続けるように指導して卒業としました。
今回はボールを投げたときに明らかに右肩にグツっとした違和感があってから生じたという外傷を思わせるイベント後の右肩の痛みでしたが、評価の結果は頚椎のエクササイズのみで症状は完治してしまいました。
このように右肩の痛みに関連していると考えられる何らかの外傷のように思えるイベントがあったとしても、マッケンジー法では必ず脊椎から評価を行います。
それはたとえ肩の症状であっても脊椎に関連した症状であることは少なくないからなのです。