一年ほど前に右膝が痛かったのですが、今回は右鼡径(そけい)部の痛みがあります
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は右鼡径部(鼠蹊部、脚の付け根あたり)から大腿にかけての痛みのために来院した60代女性のお話です。
清掃の仕事を1日6時間ほど週3日、趣味としてはバドミントンを月2回している活動性の高い方です。一年ほど前に右膝が痛くなり来院されたことがあります。その際には腰椎の伸展方向のエクササイズで右膝の症状が改善しました。その後、右膝はすっかりよくなってからも一日に一回くらい立ったままで行う腰椎の伸展エクササイズはやっていたそうです。
さて、今回は、2〜3ヶ月ほど前から右の鼡径部から大腿の痛みがあるということで来院されました。といっても、何とも無い日もあります。あぐらをかこうとすると右股関節が開きにくく、痛みがあります。
姿勢を確認すると、猫背で姿勢が悪いため、まずは姿勢を矯正して保持してみます。
1分ほどしてうかがってみると、先程まで感じていた、座っている時の右鼡径部の重い感じが消えているようです。
自分でやっているとのことですから、エクササイズのやり方をチェックしてみます。
立ったままでの腰椎伸展エクササイズを上手にバランスとりながら出来ています。
現在の症状を再度チェックします。
あぐらで座ろうとすると、右股関節に5点の痛みがあります。
(あぐら 右股関節屈曲100°・外転40°・外旋40°で5点)
先程の腰の伸展のやり方は見た目にはちゃんと出来ているのですが、ちょっとだけアドバイスしてみます。
あまり上を向かないように顎を引きながら腰を伸ばすのに意識を集中してみましょう
立ったままで腰椎の伸展を10回していただきます。
もう一回あぐらをかいてみましょう
…痛いのは痛いけど、さっきよりしやすいです!
(EIS 腰に意識を集中して 10回 B 右股関節ROM↑ 40→60°)
自宅でやるべきエクササイズを再度確認して、初回評価を終了しました。
それから3日後。
すっかりよいようです。
先日来院したときに一緒にエクササイズをしてから、以後、症状は全くなくなったそうです。
それでもお約束ですからエクササイズは続けていると言われます。
エクササイズをどのようにしているのか確認してみると、約束のポイントおさえてしっかりできているのがわかります。
もうお会いすることはないかもしれませんね
またやり方が悪くなるかもしれないし…
もし脚の他のところが痛くなっても、まずはエクササイズがきちんとできていたかなと思い返してみてくださいね
右膝の痛みが腰椎の伸展エクササイズで良くなった後、一年ほどして今度は右脚の付け根から太ももにかけての痛みが出てきて、再び同様の腰の伸展エクササイズでよくなってしまいました。
それじゃ、今度、もしあまり原因のはっきりしない右足首の痛みが出てきたら?…あるいは左だったら?……やはり腰から評価するでしょう。
マッケンジー法の基本ルールとして、四肢の痛みはすべて脊椎のスクリーニングを先にするということはこれまでもお話してきました。
実際、この方のように、以前痛かった脚の部位とは別の部位の痛みで再来され、前回同様に腰のエクササイズを実施すると症状が改善するということは稀ではないのです。