一年以上前からあった左下肢のしびれと痛みが一ヶ月ほど前から強くなりました
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は1年以上前から続いている左脚の痛みが1ヶ月ほど前から痛みが強くなったという80代男性のお話です。
農業現役のお元気な方です。一年以上前から、左殿部から下肢の痛みを覚えるようになりました。痛みと言ってもさほどひどくはなかったので放置していたのですが、一ヶ月ほど前から左下肢のしびれ・痛みが強くなり、近くの整形外科にかかったところ、薬の処方だけで改善しませんでした。その後、バイクで片道1時間ほどかかる別の整形外科にかかってマッサージなどうけて1ヶ月ほど経ちますが、症状は改善していません。心臓の自病についてフォローを受けている循環器の先生から当院を紹介され受診されました。
現在は立ち上がるときに右大腿に7点(考えうる最大の痛みが10点満点として)の痛みがあります。
まずは座る姿勢を矯正して保持してみます。
すると、10秒ほどしたころ、
だんだん脚が痛くなってきました
また楽に戻ってみましょうか……痛みはどうです?
なくなりますね
(姿勢矯正保持 I-NW)
今度は立っていただいて腰の動き具合を確認します。
屈曲(前かがみ)すると9点の強い痛みがありますが、もどると痛みはもとと同じレベルに戻ります。
伸展(腰をそらす)すると2点程度の痛みがありますが、戻るとその痛みは残りません。
腰を横に動かしても全く影響なしです。
腰をそらしたときにはさほどの痛みもなく、農家で腰を折るお仕事が重なる生活状況なども考慮してまずは伸展の方向に動かしてみることにします。
こうやって腰をゆっくりと伸ばしてみましょうか。もし脚に響いたら言ってくださいね
大丈夫です
それじゃ、ゆっくりできるだけでよいので続けて10回やってみましょう
数回目に、
なんか気持ちいいですね
この、痛いけど「気持ちいい」という表現はよく聞かれます。悪い感じがしないというのはカラダのサインなのかもしれません。
10回終わってから、
もう一回歩いてみましょうか
痛くないです!
0点?
はい
もう一回座って立っていただきます。
さっきあった7点くらいの痛みは何点くらい?
今は少し太もものあたりが痛いかなというくらいです
座るとまた少しだけ痛みが戻るようです。
伸展方向のエクササイズの宿題を出して、初回評価を終了しました。
そしてその翌日。だいぶいいようです。
昨日は流し台で腰を伸ばそうとしたのですが、家の台が小さい奥さんに合わせてすべて低めになっていてやりにくかったので、立ったままのエクササイズをやったそうです。
エクササイズをチェックします。
伸展がしっかりと最後までできていません。
しかし、しっかりやろうと頑張るとバランスを崩して倒れるもしれませんね。
そこで安全のためにうしろにソファやベッドが有るような環境でやるようにお話します。
腰を前に押し出す感じで体のバランスを取りながらしっかりと腰をそらしてみましょう
やりかたのポイントを表現を変えて伝えます。
いま足の痛みはどうです?
なんとも無いです!
(EIS ER意識して 5回 B)
通院するとき、バイクに乗っていたら左足に響いてしびれてたんですよ…
ひょっとしたら1時間かけてバイクで通院していたというのも影響していたかもしれません。
そして初診から7日目になりました。
今はもう何ともありません。しかし、夕方に仕事の後などまだ多少左下肢痛を覚えるそうです。
エクササイズは一日6セットくらいできています。
以前は痛いときに痛み止めだけだったんで、今回は徹底的に治そうと思ってます!
我慢できる痛みだからと我慢して過ごしている人は多いのではないでしょうか。
すぐに治療をしないといけないということは無いかも知れませんが、今日からでも自分でできることがあります。
それは、その痛みがどのようなときに痛くなって、それがどうしたら良くなるのかを自分なりに観察してみることです。
日常生活の中で痛みの程度や部位に変化がある時、その痛みは特定のエクササイズを続けることで改善することが多いのです。