半年ほど前から長く走った後などに左膝が痛くなることがあります
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は左膝の痛みで来院した10代女児のお話です。
半年ほど前からマラソンなど長く走った後などに左膝が痛いことが時々ありましたが、自然に良くなっていたので気にしていませんでした。2日前に40kmほどの長距離を自転車で走った後から左膝が痛くなり、いつもなら自然に良くなっていたのが、今回は痛みが続くため来院しました。
しゃがむ時、しゃがんで立ち上がるときなどに左膝の前方に痛みがあります。昨日より今日は少し良いようですが、まだ立ち上がるときには3点(考えうる最大の痛みが10点満点として)の痛みがあります。
座っている姿勢を見ると、最近のお子さんに多く見られるだらりと丸くなった猫背です。
座るときに両手を太ももの下に敷き込んで座るくせがあるようで、この猫背の状態が続きます。
まずは姿勢をしっかりと矯正してみます。
流石に体は柔らかく、姿勢の整え方を説明すると、極端なほどに腰をしっかりとそらして背筋を伸ばすことが出来ます。
そのまま1分ほど保持した後に、もう一度立ち上がって痛みの具合を確認します。
いま何点だった?
う〜ん、2点かな
少し良い印象です。
引き続き立位で腰椎の可動域検査を行いますがとても柔らかくいずれの方向も全く問題なく自由に動けます。
普段の猫背の姿勢と先程の姿勢を整えて良い印象だったこととをあわせて、まずは立ったまま腰椎をしっかりと反らすやり方を説明してまずは一回、問題のないことを確認して10回、と思っていたのですが、途中で疲れたようなので8回にまけて続けて反らしてみました。
もう一回座ってから立ってみようか
1点くらいです!
最初に感じていた痛みの半分以下になりましたので、姿勢の指導とエクササイズの約束などして初回評価を終了しました。
それから3日後。
もうなんともないようです。
初めて来院した日の夜には1点くらいになって、その翌日にはもう0.5点くらいまでよくなり、以後忘れてしまったような感じになってしまいました。
エクササイズはというと……もうやめてしまって姿勢についても今ひとついいとは言えない感じです。
姿勢の大切さを再度ご説明します。
この姿勢を良くするのだけでもしっかりと続けられるかな?
はい!
良い返事でしたが、念の為、お付き添いのお母様にもこれからもチェックしていただき、1〜2週ほどしてから経過を見せていただくようにお願いしました。
痛みなどの症状があるときには、姿勢を意識したり、あるエクササイズを実施したりすることでその症状が良くなるのであれば、そのときは頑張れるのですが、症状が良くなるとともに姿勢のこともエクササイズのことも忘れてしまうことは大人でもよくあることです。
実際、完全に良くなったと思っていた人が、数ヶ月ほどしたころにまた同じ症状で、あるいは同じ部位に関連した違う症状でまた来院されることもありますので、姿勢やエクササイズが習慣化する間もなくとても速いペースで良くなった人には、時間がかかった人より注意が必要だということをアドバイスしています。
生活習慣を変える……言うのは簡単なのですが、実際に身につくほどに変えて定着させるのはとても難しいことなのです。