case_150 右足関節痛

3ヶ月ほど続く右足関節の内側の痛み、足首の腱鞘炎と診断されています

整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもあるがどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は足首の痛みで来院された60代女性のお話です。

清掃の仕事と、お惣菜作りの仕事を掛け持ちしていて一日中立ちっぱなしというとても良く働く60代の女性です。立ちっぱなしと言っても働き方はいろいろですが、お仕事の内容的には前かがみが多いようです。
8月ころから、捻ったわけでもないのに右足関節の内側が痛くなり、お近くの整形外科にかかったところ足首の腱鞘炎と言われ、痛み止めや湿布などを処方されていたのですが、症状は全く改善しません。このまま我慢するしか無いかと諦めていたところ、人から勧められて来院されました。

痛いときは8点(考えうる最大の痛みが10点満点として)の痛みが、じっとしているときも2点の軽い痛みが続いています。今日は新たに左足関節の外側にも2点の軽い痛みも感じるようです。また、以前から物をかかえる作業などで右手関節橈側(親指側)にも痛みがあります。

姿勢はやや悪い程度ですが、まずはしっかりと姿勢を矯正して1分ほど保持してみます。

A子さん
A子さん

今は痛くないです…1点もないくらい

先程は何もしなくても痛かった2点ほどの痛みが多少軽減しました。

足関節の痛みが主な症状ですが、引き続き腰椎の評価を続けます。

腰椎の可動域検査では、横に動かす動きでいつもの痛みが増強することが確認されました。

(ROM 左SG 右足関節内側痛 I-NW)

もう一度、歩いてもらい、歩行時の足関節痛が5点、同じ部位の圧痛が3点あることを確認しました。

先程の姿勢保持の反応からまずは伸展方向を選びました。
流し台のところで腰をしっかりと反らしていただきます。

佛坂
佛坂

もう一回歩いてみましょうか

A子さん
A子さん

…あんまり痛くないです

佛坂
佛坂

何点くらい?

A子さん
A子さん

1点くらいですかね

(EIS流し台 10回 右足関節痛 1点 B)

とても良い反応が得られましたので、あと10回しっかりと反らしてもらいます。

佛坂
佛坂

もう一回歩いてみましょうか

A子さん
A子さん

もう痛くないです!

(EIS流し台 10回 abolish B)

佛坂
佛坂

腰を横にずらすのやってみましょうか

A子さん
A子さん

これも痛くないです

佛坂
佛坂

押して痛いところは?

先程痛かったあたりを探して押してみましたが、痛みの場所はわからなくなってしまいました。

右手関節についてはこの腰椎のエクササイズをしながらどうなるのか反応を見ることにしました。
というのも、脊椎はつながっているので、あるエクササイズをしたときに、他のメインターゲットではない部位にも影響があることは稀ではないのです。

それから4日後。足関節の痛みはエクササイズをすると良くなるけど、まだ痛いという感じです。右手関節の症状には変化はないようです。
ご自分でやっていたエクササイズを家でやっていたとおりにしていただきチェックします。やり方にはあまり問題はないようで、エクササイズのポイントなどご説明し2回目の評価を終了しました。

それから7日後、初診から11日目になります。
やはりエクササイズをやるとよいけれど、また痛くなるという感じです。右手関節もあまり変化は感じません。
先日のポイントをしっかりとおさえてエクササイズをしていることを確認できました。
そのままのペースで続けていただきます。

さらに7日後、初診より18日目。
やはり体操すれば良い感じ。土日は忙しくてエクササイズが全く出来ず、右足首が痛くなりましたが、体操すると痛みが取れるという状態にはかわりません。
しかし、この頃になると全体的には痛みが軽くなっていると感じてきたようです。
加えて右手関節橈側の痛みも少し軽くなっているのを自覚するようになってきました。

エクササイズをチェックします。ポイントをおさえてしっかりとエクササイズができています。

エクササイズ後はやはり足首の痛みは軽減します。

宿題にしたエクササイズで症状が改善するものの、完全に症状が顔を出さないわけではなく停滞しているようにも見えます。

この先このまま同じエクササイズを続けるのか、それとも別のエクササイズにするのか、あるいは何らかの形で負荷を増やすのか…。皆さんはどうお考えになるでしょうか。

少しずつであっても症状が改善している場合は、あえて負荷を増やすことはありません。

どのようなエクササイズをやれば症状が改善するという事がはっきりしているときは、たとえ症状の改善が停滞していても、必ずしも負荷のかけ方を変えたり増やしたりするわけではありません。

本人にとって、さほど気にならない程度の症状しかないのであれば、ある程度の症状改善効果が認められるエクササイズをそのまま続けてみるというのも一つの選択肢なのです。