以前から慢性的に腰痛があり、本人は生理痛と思っています
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は慢性的に腰痛があり、左膝が痛くなったことで来院された30代女性のお話です。
腰痛はかなり昔からあり、今回はそれが気になって来院したわけではありません。
2〜3週間ほど前に、しゃがんでの作業をした後から左膝が痛くなりました。その後、痛いときと痛くない時があり、今はなんともないようです。立ち座りなどして症状を確認していると、今は立っているときに微かに左足の裏が痛い感じがすることに気づきました。
これまで幾度となくぎっくり腰を経験しているそうです。腰は慢性的に痛いようですが、その状態になれてしまっているといった感じです。
単純X線検査で腰椎には特に異常はありません。
腰椎の可動域を確認すると、屈曲が中等度に制限されていますが、ほかは特に問題ありません。
痛みがしゃがみこんでの作業の後に起こってきたことを参考に、まずはうつ伏せになっていただきしっかりと伸展をして、もう一度、立っていただきます。
今は…足は痛くないです
先程まで立っているときにあった左足の痛みは消えてしまいました。
流れからすると伸展方向で良さそうです。
今はさほど症状はないのですが、普段の体操のやりやすさを考えて、立ったまま腰をそらしてみます。
これはちょっと腰が痛いですね…
(EIS 腰痛 P-NW)
流し台のところに来ていただいて、そちらで腰を流し台に当てていただきながら同じ動きをしてみます。
あぁ、これはあまり痛くないです
このように、ほとんど同じようにみえる動きでも方法を少し変えるだけで痛みが軽減することもよくあります。
もともと左膝のことが気になって受診されたのですが、結局、初回評価時には左膝の痛みは再現できませんでした。かわりに左足の痛みが少しある状態が腰椎の伸展でよくなりましたので、伸展方向のエクササイズを宿題にして初回評価を終了します。
それから一週間後。
だいぶ良いようです。
結局、その後、左足、左膝の痛みはなかったようです。
昨日から今日までのエクササイズがどの程度できたのかお伺いすると、仕事であまり出来ず3セットしか出来なかったとのこと。
現時点では腰の痛みがあるものの、生理中らしく、ご自分では生理痛かなって感じと言われます。
やっていたエクササイズを見せてもらえますか?
実際にどのようにエクササイズをしていたのか確認します。流し台に腰を当てながらしっかりと腰を反らすこと5回。
あぁ、だいぶいいです
(EIS流し台 5回 B)
主に立ったままでやる方をやっておられたようですが、念の為、寝てやるエクササイズもやっていただきます。
やはり腰痛は軽減します。
(EIL w/sag 10回 B)
さらに、先日は立ったままでは痛みが強かった伸展もやってみます。
見ていると、かなりしっかりと反ったところで痛いとは言われますが、可動域が大きくなっているのがわかります。
だいぶ反れるようになってきたんです
動きがよくなっていることは本人も感じているようです。
もう一度、流し台に戻っていつもやっているやり方でしっかりと5回、腰を反らしてみます。
やはり腰痛は少なくてやりやすいようです。
今、腰の痛みはどうですか?
だいぶいいです!
ってことは…、いままで生理痛って思ってた痛みって生理痛じゃないってことですかね?だって、腰を伸ばしただけでよくなってるわけだから…
ってことですよね
結局、私の目の前では一番の気になっていた左膝の症状は再現することが出来ないまま良くなってしまいました。
加えて、慢性的にあった腰痛も、自分では生理痛だからしかたないと思っていたようですが、実際には腰椎のエクササイズで改善しています。
これは生理痛だから…そう思っている腰痛、ひょっとするとエクササイズで改善する腰痛なのかもしれません。