5年ほど前から続く右脚の付け根の違和感と1年来の痛み
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は右股関節(右脚の付け根あたり)に痛みがあるという50代女性のお話です。
5年ほど前から、あまりきっかけもなく右脚つけねの前外側あたりに違和感を覚えるようになりました。1年ほど前からバドミントンやビーチバレーなどしたあとにその部位に痛みを覚えるようになったようです。
休むと良くなるのですが、プレーするとまた痛みが強くなる事の繰り返し。運転席から車を降りるときなど、右脚を外側に出すときに、右股関節の外側あたりに痛みがあります。
同じ動作を診察室で実際にやっていただき、4点の痛みが再現できることを確認しました。
股関節の痛みですが、マッケンジー法では……もちろん腰椎から評価を開始します。
単純X線検査(レントゲン写真)では変性による側弯と第4腰椎すべりがみられますが、メカニカルな負荷をかけても問題なさそうですから、引き続き評価を続けます。
まず、姿勢を矯正して保持してみます。
あっ、痛くなってきました…
いつものところ?
そうですね
姿勢を楽にすると、痛みは消えます。
やっぱり腰の影響はありそうですね
腰椎の可動域を確認すると、伸展や横に動かす動きは中等度に制限されています。伸展するといつもの痛みが再現されます。
(ROM EXT中等度制限 P 3点、SG 中等度制限)
再度座った状態で脚を広げる動作をしてみると4点、大股で歩くと3点の痛みを確認できました。
この姿勢の矯正と可動域検査に対する反応を参考にして、まず屈曲方向の負荷をかけてみます。
右脚を開くのやってみましょうか
あっ、さっきより痛くないです
立ち上がって大股で歩いてもらいます。
大股歩きで歩いてみましょう
これも少し楽ですね
(FISit 5回 4→2点 大股歩き 3→2点 B)
腰椎の可動域も確認すると、腰椎を伸展するときの痛みも少し良いようです。
(立位腰椎伸展 2.5点 B?)
良い印象ですから、さらに10回、しっかりと屈曲負荷を加えてみます。
右脚を開く動作をしていただくと、この痛みはさきほどとあまり変わりません。
大股歩きはどうでしょうね?
大股で歩きながら、
だいぶ違いますね!1点くらいです!
腰椎伸展も2点に改善しています。
方向性ははっきりしてきましたので、姿勢とエクササイズのご説明をして初回評価を終了しました。
それから5日後。初回フォローアップです。
ほとんどよくなってしまったようです。
たまに少しだけ意識することがあるくらいで、現在は症状は全くありません。
エクササイズは一日3〜4セットくらいできたそうです。
一日目はけっこう痛かったんですが、その後よくなってしまいました
エクササイズをチェックします。上手にできていますが、念の為しっかりとやることの大切さを再度ご説明します。
5年来の右股関節の違和感と1年前からの痛み。これほど続いた症状が5日ほどでほぼ完治したのはとても良いことではあるのですが、このように非常に短期間でよくなる方の中には、良くなってしまった後にエクササイズをパタリとやめてしまって、その後、数ヶ月して同じ症状が出てしまい、どうやって良くなったのか忘れてしまったり、うろ覚えで自己流のエクササイズで効果が出なかったりという方も少なくないのです。
症状を予防するための習慣が身につく前に症状が良くなってしまう方には、ある意味より注意が必要とも言えるのです。