原因のはっきりしない足関節外側の疼痛と腫脹
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は左足首が痛くなり腫れてきたという60代女性のお話です。
犬の世話をするお仕事で、一日中犬と動き回っておられる大変お元気な女性です。
ひねったり、ぶつけたりなど、特に思い当たることはないのですが、2週ほど前から左足関節外果のあたりに違和感を覚えるようになりました。その後、徐々に違和感から痛みになり、3日ほど前から痛みが強くなって少し腫れてきたため来院されました。
左足関節外果(足の小ゆび側のくるぶし)周囲に明らかな左右差があるほどの腫脹があります。発赤はありません。
足首の症状で、腫れもありますが、マッケンジー法では……そう、腰椎から評価を行います。
単純X線検査では第4腰椎のすべりを認めますが、そもそも犬と走り回れるような方ですし、問題になるような不安定性が無いことは言うまでもありません。
姿勢をしっかりと矯正して保持すること1分。
左足関節を動かしていただくと、あまりはっきりとした変化ではないのですが、左足関節の痛みが少し良いように感じると言われます。
腰の評価を続けます。
腰椎の可動域制限はありません。とてもしなやかに動かれます。
少し診察室を歩き回っていただき、現在の左足関節の痛みを確認します。5点(考えうる最大の痛みが10点満点として)の痛みがあり、これをベースラインに設定します。
立ったままで5回しっかりと腰を反らしてもらい、もう一度同じように歩いてみます。
少し軽くなりました…
(EIS 5回 B 歩行時痛 4点)
さらに続けて5回。
楽になりました…痛いけど、このくらいなら普通に歩けるくらい…
(EIS 5回 B 歩行時痛 3点)
スッキリとはしていませんが、かなり楽になった感じと言われます。
知らないうちに前かがみの繰り返しになってるかもしれませんね
そういえば子犬の世話とか前かがみが多いです
姿勢に気をつけること、腰椎の伸展エクササイズのポイントなどご説明して初回評価を終了しました。
それから4日後。
だいぶよいようです。
エクササイズは来院当日、翌日はだいぶ頑張れましたが、一昨日から2日間はやや少なめだったようです。それでも1日4セットくらいはできたとのこと。
エクササイズをやったあとは良い感じがあることを実感しています。
現在、左片足立ちで少し痛みがあります。
自分でやっていたとおりに、エクササイズをしていただきチェックします。
すると、反らしきるべきところで少しゆるい感じがあります。
もともとお元気な方で、腰椎の可動域制限もなく、走り回れる程度の活動性のある方ですから、しっかりと負荷をかけるポイントをご説明してもう一度やっていただきます。
いっぱいまで反らしたところからあと3cmって感じでやってみましょう!
もう一度、片足立ちをしていただくと、
だいぶいいです!
(EIS 5回 B)
それから1週間後、初診から11日目になります。
もう、ほとんど良くなっています。
前回の受診から1日ほどしっかりとというところを意識してエクササイズをやったら腫れも引いてきて痛みはぐっと良くなってししまいました。
湿布は使いました?
足首には結局使いませんでした…そのかわり腰が痛くなったところに
処方した湿布も結局足首には使わずに済んだようです。
これまで動かしていなかったほどしっかりと腰を動かしていますから、新たに腰痛が起こることもありますが、このような痛みはエクササイズを続けていると良くなることが多いので、このまま続けることにします。
今回、足関節の痛みと、その部位に腫れもありましたが、結局その部位には湿布すらすることなく腰椎のエクササイズで症状は改善してしまいました。
腰のエクササイズで足首の腫れが引くって…たまたま引いたんじゃない?
そうかもしれません。
しかし、腰椎の伸展エクササイズをするとその場で症状が改善することを自覚できたのも確かなことです。
足関節の疼痛・腫脹が軽減していったことと腰椎エクササイズとの関連について、皆さんはどうお考えになるでしょうか。