case_140 左殿部・右膝痛

左殿部の痛みが少し改善したころに右膝が痛くなりました

整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもあるがどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は3日前から左殿部が痛くなり、その後、右膝が痛くなったという70代女性のお話です。

70代と言っても、毎日1時間ウォーキングをしていて、趣味でグランドゴルフや太極拳などしているような比較的アクティブな方です。
手芸も趣味で、毎日午後から2時間ほど座りっぱなしでの作業をするようです。

左殿部の痛みは、歩いている時など何とも無いのですが、座っているときや立ち上がるときなどに左殿部が痛みます。

まずは姿勢を確認します。姿勢はこの年代にしては普通な感じです。
いつもどうやって座るのかを伺うと、

A子さん
A子さん

こうやって座るとなんともないんですが、こうやって座ると痛いんですよ〜

と、腰を曲げながら、自分でどんな姿勢だと症状がでるのか気づいておられます。

座った状態から立ち上がり時の左臀部痛が再現性あることを確認できました。

姿勢を矯正して保持すること1分。

佛坂
佛坂

立ってみましょう

A子さん
A子さん

今は痛くなかったです…

さほど姿勢は悪くないのですが、腰に関連した症状のように見えます。

腰の動きを確認します。

横に動かす動きで、2〜4点(考えうる最大の痛みが10点満点として)の痛みがありますので、これらをベースラインとして評価します。

(右SG 4点、左SG 2点 いずれも左殿部の痛み)

姿勢を矯正保持していい印象でしたので、まずは痛みの具合をうかがいながら5回続けて腰の伸展をしてみます。

佛坂
佛坂

腰を横に動かしてみましょう

A子さん
A子さん

あっ、さっきより痛くないです……

左にも動かしながら、

A子さん
A子さん

こっちは同じくらいかな

(EIS流し台 5回 B)

さらに5回、先程よりしっかりと伸展していただきます。

左右にゆっくりと動かしながら、

A子さん
A子さん

痛くないです!

(EIS流し台 5回 B SG痛 abolish)

方向性は見えましたので、流し台を使った腰の伸展を宿題にして初回評価を終了します。

それから10日後。

だいぶよいようです。
エクササイズは一日4セットくらいできているそうで、今日も朝から2セットしてきたそうです。

以前のような痛みはもうないのですがが、時々腰の左側や左殿部が痛いことがあるようです。
今は少し違和感程度の感じが腰の左側にあります。

エクササイズをチェックします。
とてもやわらかく上手にできているのがわかりました。

佛坂
佛坂

今、さっきの腰の違和感はいかがですか

A子さん
A子さん

…今はないです!

(EIS流し台 5回 B)

今後も同じ方針でエクササイズを続けるようにと説明していると、

A子さん
A子さん

時々、右膝が痛くなることがあるんです…

今はなんともないようで、右膝が痛くなったときも、その後できるときに腰を反らす体操をしてみて、右膝の痛みがどうなるのか確認していただくようにお願いしました。

それから1週間後、初診から17日目。

数日前から左殿部痛は完全に良くなったようです。
一方、右膝の内側の痛みがまだ続いているので薬を出してもらおうと思って来院されたようです。
右膝は痛くない日は全く何ともありません。
今は歩くときに右膝の内側に5点の痛みがあります。

症状がありますのでエクササイズの効果を確認するチャンスですね!
エクササイズをチェックします。

腰がとても柔らかく、かんたんに反らせていますので、これ以上そらそうとすると倒れそうです。

そこで、今度は椅子の背もたれをつかって腰を支えて、よりしっかりと反らせてみます。

佛坂
佛坂

ちょっと歩いてみましょうか

A子さん
A子さん

少し軽くなりました!

(EIS 椅子の背もたれで5回 ER意識して B)

歩くときの右膝痛が軽くなることが実感できたようです。
さらにあと5回続けてから、また歩いていただきます。

A子さん
A子さん

さっきの半分くらいにはなりました

腰を反らせることで右膝の痛みも改善する事がわかりましたので、引き続き腰をしっかりと反らせるエクササイズを宿題とします。

それから一週間後、初診から24日後。

数日前から膝の症状も全くありません。

今後の再発予防のための注意点などご説明して卒業としました。

痛みが時々あるような場合、患者さんの症状は診察室で再現できるとは限らず、どういうエクササイズが良いのかを決めるのが難しいことがあります。
そのような場合でも、伺った情報や評価中の僅かな変化などにヒントを得て自分でやっていただくエクササイズを決めます。
そして次回来ていただく時にその結果どうだったかを細かくお伺いしながら次に進むべき方向を決めていきます。

一方、何らかの症状がある時、メカニカルな負荷をかけることによってその症状がどのように変化するのかを評価できるため、症状改善への糸口を見つける絶好のチャンスとマッケンジー法では考えます。