5年ほど前から時々、右膝にズキンと響く痛みが走ります
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は、時々、右膝が痛くなるという30代女性のお話です。
5年ほど前から、これといったきっかけもなく時に右膝にズキンと響く痛みを自覚するようになりました。
以前、お近くの整形外科で診てもらったときには、膝の靭帯を痛めているなどと言われて湿布をもらったのですがそれ以後も症状は変わりません。
お仕事は介護職です。昨日、利用者の方のオムツ交換を他の職員と行う際に、中腰で体を支えていて右膝にズキンといつもの痛みが走りました。
その後、痛みは軽くなっていますが今でも歩く時に右膝の内側に2点の痛み(考えうる最大の痛みが10点満点として)があります。
姿勢をしっかりと整えて保持してみますが、症状はかわりません。
次に腰の動きを確認すると、いずれの方向にも硬いようです。この動きを見る中で、腰を右に動かすと右膝の外側に痛みがあります。
(LSG P 右膝外側痛)
先程確認した右膝の内側の痛みではないのですが、腰の動きで右膝の症状が誘発されましたので、今回ズキンと痛くなった昨日の状況などを参考に、伸展方向から確認することにします。
まずはその場で5回、しっかりと腰をそらしてみます。
歩いてみましょうか
先ほどと同じように診察室を少し歩いてもらいます。
今どうです?
今は……痛くないですね!
ゼロ?
はい
ってことは膝じゃないみたいですね
腰ですね!
(EIS 5回 abolish B)
エクササイズのやり方のポイントをご説明してどのようなタイミングでエクササイズを行うのかなど相談して初回評価を終了しました。
あれっ、膝は?……そう思われる方も多いことでしょう。
だって痛いのは右膝なのに、右膝を曲げ伸ばしするどころか、痛いところを押してみることすらしていません。
これまで症例ファイルをご覧頂いている皆さんにはもう当たり前になっているかもしれませんが、マッケンジー法では膝も含め、下肢の症状は全て腰椎から評価するというルールがあります。
それは、この方のような膝の症状が、膝には手も触れずに腰のエクササイズで良くなる場合が少なくないからなのです。
膝が痛くて膝の治療を受けているけど全く症状が変わらず、これまでマッケンジー法による評価を受けたことがないという方には、ぜひ一度、お近くの国際マッケンジー協会認定セラピストの在籍する施設で評価を受けてみることをお勧めいたします。