case_121 腰のこわばり

痛いというわけではないのですが、腰のこわばりが3年ほど続いています

整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもあるがどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は腰のこわばりが気になって受診したという40代女性のお話です。

「腰が痛い」という患者さんは多いのですが、「腰がこわばる」という患者さんはあまりいらっしゃいません。ひょっとしたら人によっては痛いと感じるところをこわばっていると感じていることもあるでしょうし、あるいは、こわばっているくらいで病院などの医療機関にかかろうとは思わないのかもしれません。

こわばり感はこの3年ほどですが、よくお伺いしてみると、高校生の頃から腰の気になる感じがあったそうです。
最近、こわばり感が強くなってきて、特に朝が悪いようです。

販売で立ちっぱなしのお仕事ですが、立っていると悪くなるというわけではありません。

可動域検査では伸展(腰を反らす)で軽い腰痛があります。

問診情報からも日常生活の中でどのようなときに良いのか、あるいは悪いのかという情報があまりはっきりしませんので、良くも悪くも症状に変化があるかを確認するために、まずは立ったまま腰を反らす動きをやってみます。

流し台に腰をあてて反らすこと10回。症状をお伺いすると少し良いかもという程度ですが、とくに腰椎の可動域には変化がありません。

(EIS反復 NE)

はっきりしませんので、今度はうつ伏せでしっかりと10回。途中で腰の左側に少し痛みが出ますが、その痛みは繰り返しているうちに軽減していきました。

そしてもう一度座っていただくと……少しこわばり感が軽減しているようです。

(EIL 10回 PDM左腰 B?)

最初はどちらかというと伸展して多少症状がはっきりしてきたところで屈曲して改善するかもというような予測をしていましたが、以外な展開はよくあることなので、常に目の前で起こる反応を素直な目で見るように心がけます。
伸展して良い反応の印象でしたので、ここで宿題のエクササイズを決めて初回の評価を終了しました。

それから7日後。

朝のこわばり感は3日ほどで半減したようですが、まだスッキリはしていません。

エクササイズはうつ伏せの体操と立ったまま行う体操をあわせて一日10セットくらいできたようですからかなり優秀です。

症状は半減しているのでこのまま続ける方向でよいと思われますが、フォローアップ時にはエクササイズをどのように実施されていたのか必ずその場でやっていただき、自己流になっていないかなど、やり方のチェックを行います。

うつ伏せでの腰を反らす体操はかなりスムーズに、楽にできていることがわかります。

佛坂
佛坂

今のはきつかったですか?

A子さん
A子さん

いえ、きつくないです

最初は少し腰に痛みが出ていましたが、いまはもう楽に腰が伸ばせていることがわかります。

そこで、負荷をもう少し上げてみることにしました。

両手の下にタオルを入れて、少し高さを上げて負荷を上げて10回……まだ少し腰の左側に痛みが出ますが、もどったら痛みは残っていません。

(EIL反復 両手の下にタオルを入れて高く 10回 PDM 左腰 NW)

立って行うエクササイズもチェックし、しっかりやることの大切さをご説明します。

そして初診より14日目、前回の来院から7日目のこと。

朝のこわばり感はかなり抜けてきたようで、今は少しあるけども8割は良くなった感じです。

今の所、順調に良くなっているようです。

佛坂
佛坂

もし治り方が頭打ちになったらどうします?

A子さん
A子さん

あぐらをやめて正座とか……

佛坂
佛坂

それもいいかも

A子さん
A子さん

運動する?ウォーキングとか?

佛坂
佛坂

それもいいですね。もし日常生活のことを変えないのであれば、まずは体操のやりかたを少し変えてみるのもいいでしょう。例えば、例の手の高さを上げるのをもう少し高くしてみるとか、しっかり伸び切ったところで少し長めに伸ばしたままにするとか

症状を改善するためにどのような工夫ができるのかということを患者さんと一緒に考えるのも自己管理に向けた大切なプロセスです。

A子さん
A子さん

走ってもいいですか?

佛坂
佛坂

もちろん!走っていて、もしまた腰が痛くなったらどうしたらいいと思います?

A子さん
A子さん

腰をそらす?

佛坂
佛坂

そうですよね。それさえ知っていれば怖いことないですよね!

この「○○をしてもいいですか?」というご質問もよく聞かれます。

もし痛くなったら、もしまた症状が強くなったら……その時は、今やっているエクササイズのやり方がちゃんと出来ているのか、またそもそもその時点での適切なエクササイズであるのかを判断する絶好のチャンスとも言えるのです。