思い当たる理由もなく右足首が痛くなりました
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は捻挫したわけでもないのに右足首が痛くなったという10歳女児のお話です。
運動はテニスを週に3回程度していますが、テニスについては特に最近変わったことはありません。
1〜2週間前から、捻ったり、ぶつけたりした記憶もないのに右足関節外側に痛みを覚えるようになりました。
自宅では椅子かソファの生活のようですが、どちらかというと椅子のほうが多く、学校の宿題はリビングでするようです。
歩くとき、走るときに左足関節外側に痛みがあります。マッケンジー法による評価では医療面接の際にその症状が日常生活でどのように変化するのかをかなり細かく聴取します。
1週間くらい前に足が痛くなってから、歩いていても全然痛くないこともあったかな?
学校の教室移動の時に、全然痛くなかったことがあります
教室移動のときに全く痛くなかったのですが、その後、また痛みが戻ってきた経験をしているようです。
このようにある同じ動作で痛いときもあれば全く痛くないときもある……マッケンジー法による評価をしている皆さんにはピンとくる、ある分類を示唆するかなり有力な情報です。
もちろん、足関節の腫脹も、発赤もありませんし、通常の可動域は保たれています。
単純X線写真では腰椎の前弯が強い(一般に反り腰と呼ばれるような状態)ことが確認できますが、腰椎、足関節とも特に問題となるような異常はありません。
腰椎の可動域検査では伸展(腰をそらす)はとても良くできるのですが、屈曲(前かがみ)は指先が床につきません。
立ったままの状態で右足に体重を載せると3点(考えうる最大の痛みが10点満点として)、歩行時には5点の痛みがあり、これらをベースラインとして運動負荷によりどう変化するかを見ることにします。
先に姿勢矯正保持検査をして何ら影響がないことを確認していますので、まずは屈曲負荷をかけてみます。
診察台に端座してもらいしっかり屈曲すること10回。
立って右足に体重を載せてみようか
何度か右足に体重を載せながら確認しています。
……う〜ん、ん〜、あまり痛くないかな……
歩いてみようか
少し痛くないです
何点くらい?
3点くらいかな
(FISit w/op self 10回 NE, 荷重時痛、歩行時痛 D-B)
良い印象ですので、曲げるときに負荷をしっかりとかけるように指導しながら10回追加してみます。
もう一度歩いてみようか
立ち上がって歩きながら、
……あまり痛くないです
何点くらい?
1点くらい…
(FISit w/op self さらにER意識して 10回 荷重時痛、歩行時痛 D-B)
症状は診察開始の時点と比べて半分以下にまで改善していますので、初回評価はこのあたりでやめて、座るときの骨盤の整え方や自分でやるエクササイズなど説明して初回評価を終了しました。
そして2日後。
もう全く痛くありません。
初診当日の夜には痛みはなくなっていたようです。
運動しても大丈夫ですか?
運動してて、もしまた痛くなったらどうしたらいいと思う?
教えてもらった体操します
それを知ってたら何も怖いことはないね!
これまでにも症例ファイルでご紹介してきましたが、上肢、下肢の様々な痛みが頚椎や腰椎に関連していることは稀ではありません。
手や足に痛みがあるとき、その痛みが同じ動作や状況で常にあるのかという情報はとても重要です。
痛みがある時とない時があって、痛みがない時にはなんともない……そんな症状があるとき、その症状はひょっとしたら首や腰など脊椎に関連した痛みかもしれないのです。