30年来の腰痛・右臀部痛があるようです
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は30年以上も前から時々腰痛を繰り返していた60代女性のお話です。
30年ほど前に農業を始めてから、時に腰の右側、右臀部あたりに痛みを覚えていました。ある時、急に右股関節が痛くなって、お近くの整形外科の病院でMRIを撮影され、右股関節に水が溜まっていると言われたこともあるそうです。
今回は、3週ほど前から腰が痛くなり、いつもと多少痛む場所が違っていたので骨折などしていないだろうかと心配になり来院しました。
お仕事では立ちっぱなしのようですが、前かがみでの作業が続くと悪いようです。
単純X線写真では明らかな骨折はありません。軽度の変形(腰椎変性側弯、L3/4軽度辷り)を認めます。画像上は股関節には異常はないようです。
現在、症状はほとんど無く、いろいろ動作をしたり、腰を前後に曲げたり、左右に動かしたりしてみますが、症状は再現されません。
しかし、前かがみでの仕事が続くと腰が痛くなるという情報が得られていますので、どちらかというと伸展方向が良さそうに思えます。
そこで、伸展のエクササイズをしっかりと10回やってみます。
特にふらつきなく、10回完了して特に変化はありません。
(EIS 10回 NE)
エクササイズの宿題は、この伸展エクササイズに決めました。
今回のように診察室で症状が再現できないときには、このように伺った情報からエクササイズを決めることもあります。
ただし、処方するエクササイズは必ず診察室で実際にやっていただき安全性が確認されたものから選んでエクササイズを決めて宿題にします。
それから2日後。
だいぶ良いようです。
腰の右の方の痛みはあれ以来なくなりました!
例の右臀部の症状は、腰椎の伸展エクササイズをやり始めてから消えたようです。
今まで傾いて立ってたような感じがしていたのが、まっすぐに立てているように感じてます
腰痛・下肢痛の患者さんでは、症状の改善と同時に、足がしっかり地につくようになったなど、バランス感が改善したということも時に患者さんから聞かれます。
エクササイズは1日……なんと10セットもやっているそうです!とにかく気がついたらやっているとのこと。
エクササイズをチェックすると上手にできていますので、さらに少し効果を高める工夫をご説明し、実際にやっていただき、問題ない事を確認します。
(EIS 伸展のERで2秒ほど持続を入れる)
それから5日後、初診から1週間後になります。
昨日は何ともなかったようです。
今日は作業の後に少しだけ右臀部の痛みがあったくらいですが、そのまま仕事を続けられるレベルでした。
出来るときにはいつでもやってます
エクササイズをチェックすると、先日お約束したとおりに上手にできています。
若い頃、農業をやり始めてから腰が痛くなったんですが、痛くなっては病院に行って一時しのぎの繰り返しでした…
きっと前かがみの生活環境の影響で出てきた腰痛なのでしょう。あまりに長い期間痛かったので、もう痛いのが当たり前という生活を送っておられましたが、痛みがない生活ができていると嬉しそうです。
30年以上もの間、繰り返していたという腰痛。罹病期間が長いから治らないということはありません。症状が身体を動かすことによってどう変化するのかは、実際に体を動かして、そして同じ動きを続けてみないとわかりません。
この「動かしてみる」というメカニカルな評価こそ、マッケンジー法の優れた考え方なのです。