一年前と同様の右膝痛、なぜ再発したのでしょうか
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は右膝の痛みで来院された60代の女性のお話です。
この方、ちょうど一年ほど前に右膝、右腰の痛みで来院していた患者さんです。初回評価を行った直後から姿勢矯正と腰椎伸展エクササイズで症状が気にならないレベルに改善しました。
その後、調子が良かったようで、腰をそらすエクササイズについては自分なりに解釈して、うがいをするときに腰をそらすのでそれだけでよいだろうと考えてエクササイズはやめていました。
さて、最近、畑仕事しすぎたためか、右膝に痛みを覚えるようになりました。しばらくお話を伺っていると、先程から腰の右側も痛くなってきたようです。
実際に体を動かしていただく前にもう一度、症状についてお伺いすると、今は右膝痛はなく、右腰の痛みだけのようです。
姿勢を整えてしばらく保持してみますが、さほどの変化はないようです。
(姿勢矯正保持 NE)
腰椎の可動域検査では両側に腰を動かす動作で腰の右側の痛みが増強されますが、もどると元通りです。
(ROM 両SG 右腰痛 I-NW)
立ったままで、今までやっていたという、うがいの動作を実際にやって見せてもらいます。
その後、流し台に腰を当てて安定させながらしっかりと腰を反らす動作をやって比べてみます。
こんなに反ってもいいんですね…
更に続けてトータル5回。
もう一度、腰を横に動かすのをやってみましょうか
今は痛くないです…
(EIS流し台 5回 SG時痛 abolish B)
それから3日後。
腰痛もすっかり良くなって立ち上がりも楽になり、玉ねぎの植え付けを300個ほどできたそうです。
うがいをするときも腰を洗面台のふちにあててしっかりと反るようにしていると言われます。
やはりうがいをするときの習慣が身についておられるようですね。
畑仕事のときにも掴まれるところで腰をしっかりと反らしているそうです。
また膝が痛くなったらどうします?
腰をそらす体操をします!
そうですね!まずは腰をしっかりと反らしてくださいね!
初回評価で劇的に症状が改善する人は特に注意が必要であることを、以前にもご紹介したことがあります。
その後のフォローの重要性はご説明もしているのですが、なんとも無くなった時に、もう一度わざわざ時間を作って続きの指導を受けに行く人がどれだけいらっしゃるでしょうか。
これは仮に私がマッケンジー法を理解していない患者であったとしても、同様に行動するのではないかと思います。
しかし実際には「症状がなくなった」=「治った」ではないのです。
マッケンジー法では、症状が改善した後、再発を予防に至るまでの教育を行い、最終的に自己管理ができることを目指しているのです。