バドミントンの練習がハードになり右肩が痛くなりました
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回はバドミントンが趣味の40代女性のお話です。
バドミントンの腕前は国体クラスの方で、普段から練習されていますが、一ヶ月ほど前からバドミントンの試合前ということもあり練習をつめてやってから右肩痛出現しました。2週ほど前から少し悪くなっています。最近では夜寝ているときに右肩が痛くて目が覚めることもあり、睡眠不足になっているようです。
医療面接で得た情報にはレッドフラグはありません。
座っていただき姿勢を確認しながらお話します。
ご自分の姿勢はいい姿勢か悪い姿勢か普通かといったらどれだと思います?
いい姿勢だと思います
実際にはあまりよくない姿勢です。
そもそも自分のボディイメージを意識する訓練など受けたことがある人のほうが少ないと思いますし、感覚的に正確に捉えている人はむしろ小数派です。
まず、姿勢を整える前に、そのままの姿勢で右手を前に挙げる、外側に挙げる動作で2点の右肩痛(考えうる最大の痛みが10点満点として)があることを確認できました。
(右肩前方挙上、外転 160° 右肩痛 2点)
加えて、ラケットを振るときのテイクバックのような状態で手を挙げるよりわずかに強い右肩痛が確認できます。
(水平外転外旋 3点)
悪い姿勢を真似して、そこからどこをどうすると良いのかということを実演しながらやり方をご説明します。
良い姿勢を保持すること1分。
さっきと同じように手を上げてみましょう
あらっ、さっきより痛くないです…
(姿勢矯正保持 B)
もともとスポーツをバリバリこなしている方ですので、最初から少し強めの負荷で頚椎をしっかりと伸展してみます。
手を上げてみましょうか
……全然痛くないです!
ちょっと驚いたようです。
さっきの痛い方の動きをやってみましょうか
これも全然痛くないです!
姿勢、エクササイズのことなどご説明していると、
さっきまであった右肩の違和感が無くなって、今は左右全く同じ感じです
先に伺いそこねていましたが、この違和感のような症状もベースラインとして評価することもあります。
今回は事後申告になりましたが、明らかな改善感があるようです。
それから10日後。
聞くと、しばらく調子が良かったのに、エクササイズをやっても効かなくなり、バドミントンを控えていたそうです。
右肩の水平外転(外側に挙げる動作)では初診時より強い5点です。
エクササイズのチェックをします。
最初に自分のやり方で5回やっていただきます。
あれっ、今は痛くないです!
ご自分でもポイントを抑えながら丁寧にやれば大丈夫そうですね
私に見られているので、いつもより丁寧にエクササイズをやったそうです。
さらによりしっかりと効かせるポイントをご説明して5回。
ポカポカして汗が出てきました……
そう、毎回そのくらいやってくださいね!
しっかりとエクササイズをするとかなり筋肉を使うので、肩周りのポカポカした感じを覚えられる方が多いようです。
これで安心……かと思いきや、それから17日目のこと。
夜が眠られないほど痛かったそうです。昼間は比較的良いけれど、バドミントンをした後は悪くなり、今も練習後で痛みが強い状態です。
仰向けに寝てもらって、背中にタオルを入れてしばらく様子をみると、症状が軽減します。
(タオルを上位胸椎に入れて仰臥位RET持続 B)
さらに座った状態でのエクササイズで上半身が後方に倒れやすいとのことですので、両手を太ももにつくやりかたをご説明し頚椎の伸展をしばらく反復してみます。
右肩の痛みいかがです?
あっ、痛くないです!……これだったら寝られそう!来てよかった
人それぞれに、ちょっとした工夫やエクササイズのやり方の微調整でガラリと症状が変わる……ここがマッケンジー法の難しいところでもあり、醍醐味とも言えるところなのです。