10年以上続いている左膝痛ですが、診察の時はあまり痛みません
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は10年以上前から続いている腰痛と左膝痛について来院された50代女性のお話です。
15年ほど前から腰痛があり、それから数年後に左膝痛を自覚するようになりました。ご家族のお世話が大変だった頃は特に症状が強かったようですが、その後、フォークダンスをするゆとりが生まれ、症状が少し軽くなっていたようです。
フォークダンスをしている時には忘れているものの、ダンス後に左膝が痛くなり、最近では多少右膝も痛みます。正座はできません。以前、他の整形外科で水を抜いてもらったこともあります。
当院にかかっておられる方から、当クリニックで体操を教えてもらえると言われたそうで、ちょうど同じ頃にピラティスの誘いもあったけれど、先に病院へ行ってみようと考えて来院しました。
しかし、初診当日はさほど痛まないようで、しゃがみ込むと左膝の前方と膝窩部に軽い違和感程度、点数にして1点(考えうる最大の痛みが10点満点として)の痛み程度です。腰にも1-2点の軽い痛みがあります。
過去にお話したことがありますが、評価の際に、メカニカルな刺激による症状の変化を見るマッケンジー法では症状が軽いときはある意味評価が難しくなります。
既往歴も含め、メカニカルな評価が禁忌となるようなレッドフラグはありません。
単純X線検査では腰椎の変性は軽度、左膝はほとんど変性の無いきれいなお膝です。
まずは腰の可動域を確認します。もともとフォークダンスをなさるくらいの活動性をお持ちの方ですからよく動けるのですが、他の動きに比べ、伸展が制限されているのが目につきます。
今回は症状が非常に軽く、生活習慣からもはっきりした増悪因子や改善因子が特定できませんでしたので、可動域制限がみられる伸展から確認してみます。
腰を反らしてみることをお話すると、少しご不安なように見えたので、横について声をかけながら立ったままでの伸展を5回していただきます。最初はこわごわでしたが、毎回少しずつ反らしやすくなってきました。左膝の症状はかわりません。
(EIS 5回 腰椎EXT ROM↑)
診察台にうつ伏せになっていただき、伏臥位でしっかりと腰を反らす動きを5回していただきます。これもあまり変化はありません。
(EIL w/sag 5回 NE)
腰を伸ばしたら腰痛が悪くなるんじゃないかと思って伸ばさないようにしていました
いま一緒に動かしてみて大丈夫だとわかりましたね!
はやくやってみたいです!
次に進むべき道は患者さんとの会話の中に見出します。
今日は「腰を伸ばす」という患者さんにとっては大きなブレークスルーがあったことがわかりました。
立ってやるエクササイズと、うつ伏せのエクササイズとではうつ伏せのエクササイズが分かりやすかったとのことですので、初回の評価はここまでとして次回までの宿題を決めます。
(EIL w/sag 10回/セット、1日3セット 朝1・夕2 +合間に数セット)
そして一週間後。
症状はあまりかわりません。
でも、長く立っている時にさほどきつくなかったような気もするとのことです。
エクササイズをやっていただきチェックします。
うつ伏せでの腰の伸展が大変スムーズによりしっかりとできるようになっています。
頑張っておられる証拠ですね!
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(このお話は続きも含め、イラストや解説付き電子書籍でご覧いただけます)
このお話は電子書籍の自著「マッケンジー法・症例ノート・#23」でご紹介しております。
ご意見の多かった、「動き方がピンとこない」とか「専門用語がわかりにくい」などといったことに配慮し、動き方をわかりやすくイラストにして配置し、専門用語についても、可能な限りそのページ内の欄外に配置してページをあちこち探さなくても読み進められるようしています。
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