2年間我慢してきた腰痛、右下肢痛、悪くなる一方の慢性の疼痛のようです
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は2年来の腰痛と右下肢痛を主訴に来院された70代女性のお話です。
以前からぎっくり腰を何度かしたことがあり、平成26年末にぎっくり腰をして以来腰痛が続き、平成27年1月頃から右殿部〜大腿〜下腿の痛みを覚えるようになりました。
お近くの整形外科にかかり、腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症と言われ、投薬を受けましたが改善しません。
他に何もしてもらえないため整体や整骨院に長く通ったのですが、改善せず悪くなる一方で、昨年末からは、もう治らないものと諦めて整骨院にも通うのをやめてしまっていました。そんなある日、お孫さんの付き添いで当院の待合にいたとき、たまたま壁に掲示されていた「マッケンジー法について」という案内をみて、一度かかってみようと考えて受診しました。
以前、整形外科で腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症と言われてます
画像の所見はそうかもしれませんね。でも、画像の所見に異常があっても、それが痛みの原因とは必ずしも言えないんですよ
えっ?腰部脊柱管狭窄症があるから痛いと思ってたんですが…それじゃ刷り込まれてただけなんですか?
その通りです。マッケンジー法ではその人がなんという病名だからどういう治療をするという考え方をしません。動きに対してどのように症状が変わるかを見ながらその人にあった体操を見つけていきます。なので、病名ことは忘れていただいていいです
こんな会話はこの方にかぎらず、マッケンジー法で診療している現場では珍しくありません。
単純X線検査も実施しますが、他の情報も含めてレッドフラグはありません。
まず姿勢をチェックしますが、姿勢は明らかに悪いようです。姿勢を矯正して保持すること1分。右下腿の痛みはかわりませんが、右大腿の痛みが軽くなり、かわりに右殿部のほうが痛い感じがあります。
痛みが少し動いていますね!これはマッケンジー法ではある分類である可能性を示唆する有力な所見と言えます。
可動域検査の前に、現在の症状を確認します。立位で右殿部〜大腿〜下腿のはっきりと自覚される疼痛5点(考えうる最大の痛みが10点満点として)があります。大変快活な印象でそれほど痛いという表情をされていなかったので意外な感じでしたが、慢性痛の方は我慢強く、痛みに慣れている方が多いのです。
立ったまま屈曲すると少し痛みが軽くなりますが、戻ると元通りです。
(屈曲軽度制限 D-NB)
屈曲が比較的柔らかくできる割に伸展は制限されています。症状はこちらも少し軽くなったかと思われましたが、また元通りです。
(伸展中等度制限 D-NB)
こんなに腰を伸ばしたことあります?
いえ、だっていままで動かしてはいけないと思ってましたから…
なにかしらこのような「○○してはいけない」という思い込みにとらわれている人は少なくありません。
右に腰を動かしてみると、症状が強くなりますが戻ると元通りです。
(右SG軽度制限 I-NW)
左は逆に症状が軽くなるように見えましたが、こちらも戻ると元通りです。
(左SG軽度制限 D-NB)
ここで、もう一度診察室を歩いてもらい、症状を確認してもらいますが、歩行時も疼痛は5点で来院時と変わりません。
どの動きも戻ると元通りでしたが、次にどのような刺激を加えてみるか。
実は現段階ではなんとも言えません。いずれも戻ったら「元通り」だからです。
より変化のはっきりしていた横方向を選びました。
もう一度左にしっかりと腰を動かしてみますが、もどると元通りです。
(LSGIS 1回 D-NB)
同じ動きを5回やってみます。すると、こんどは歩くのが幾分楽になったと自覚されました。
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(このお話は続きも含め、イラストや解説付き電子書籍でご覧いただけます)
このお話は電子書籍の自著「マッケンジー法・症例ノート・#15」でご紹介しております。
ご意見の多かった、「動き方がピンとこない」とか「専門用語がわかりにくい」などといったことに配慮し、動き方をわかりやすくイラストにして配置し、専門用語についても、可能な限りそのページ内の欄外に配置してページをあちこち探さなくても読み進められるようしています。
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