case_60 右手関節痛

5年来の右手首の痛み…バドミントンのしすぎで腱鞘炎に?

整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもあるがどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は介護・調理がお仕事のバドミントンがお好きな60代の女性のお話です。

実は今回受診されたのは、右手関節の痛みのためではありません。その朝、スライサーを使っていて、右母指をそいでしまい、なかなか血が止まらず処置のために来院しました。受診時はすでに血は止まっている状態で、小さい範囲の皮膚欠損でしたので、洗浄した後にハイドロコロイドの被覆材で被覆する処置を施し、今後の自宅での処置の仕方などご説明し終わったところで、

A子さん
A子さん

ついでと言っては何ですが、もう一つ聞いてもいいですか?

佛坂
佛坂

もちろんいですよ

A子さん
A子さん

実は右手首の腱鞘炎があって……

とお話を始められました。

バドミントンの経験があり、子供たちにバドミントンを教えています。5年ほど前から右手関節痛を覚えるようになり、この2年ほどはラケットを振る動作をすると右手首が痛くなるため、自分でバドミントンをすることができなくなりました。腱鞘炎と思い毎晩湿布をしていたそうです。

包丁で硬いものを切るときなど右手関節の橈側(親指側)が痛みます。症状からはドケルバン腱鞘炎のようにも思えます。

圧痛は母指の付け根から手首あたり(snuff box、嗅ぎタバコ窩周囲)にありますが、ここという痛みの部位があまりはっきりしません。

単純X線写真では右母指基部と手根骨の一部に関節の変形(変性)を認めます。

(CM、ST関節裂隙狭小化+、骨硬化+)

頚椎にも変形と軽度の不安定性を認めますが、伸展位では比較的よい状態に整復されます。

(C4/5不安定性+、後弯+)

診察室に常備している症状を再現するために使う1mほどの塩ビのパイプを右手で握って振ってもらい、5点(考えうる最大の痛みが10点満点として)の痛みが再現することを確認しました。

姿勢は…よく見られる頭が前に出た悪い姿勢です。

(Protruded head+)

姿勢を矯正保持し、症状の変化を確認しますが、特に変わりはありません。

(姿勢矯正保持 NE)

頚椎の可動域検査では右側屈に重度制限を認め、同時に軽度の頚部痛があります。
痛いから横に曲げられないというより曲がらない感じのようです。かなり前から右に曲がりにくいことは意識していました。

伸展(上を向く)は比較的よくできるので、伸展するときの症状の変化をモニタリングしながらしっかりと負荷をかけて5回動かしてもらいます。

そしてパイプを握って振っていただくと、右手関節痛は少し軽くなった感じがするようです。

(RET+EXT w/op self 5回、B?)

少なくとも悪い兆候は全くありませんので、さらに5回。

もう一度、パイプを握って振っていただくと…

A子さん
A子さん

全然痛くないです!

こちらを見ながら驚いたような表情で何度も、さらにしっかりと棒を振って信じられない様子で確かめられます。

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