陸上部の練習後に左足関節の前方の痛み
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は左足関節が痛くなって来院した13歳女児のお話です。
10日ほど前のこと、陸上の部活練習中はなんともなかったのですが、家に帰って座っていて立ち上がる時に左足首に痛みを覚えました。近くの整形外科にかかり運動のしすぎと言われ湿布をしていました。特に安静にするということもしておらず、その後も痛みが良かったり悪かったりを繰り返しています。陸上練習は1日あたり3時間くらいです。
痛みの場所は左足関節の前方で、左足でケンケンしてもらうと5点の痛みがあります。
マッケンジー法では下肢症状の評価は腰椎から行います。
姿勢が悪いのですが、姿勢を矯正し保持しても特に変化はありません。
腰椎の可動域検査ではいずれの方向にも大変柔らかいのですが、腰を左に動かす検査で左足首の疼痛が誘発されました。
(右SG 左足首痛 produce)
病歴と姿勢の情報から、まずは伸展方向から評価してみることにします。
うつ伏せで腰を反らせてもらうと、身体が柔らかく楽々できます。
そこでちょっと負荷をあげて10回反らせてみました。
そしてケンケンしてもらうと……あまり変わりないけど、どちらかというと悪いかも…?という感じ。
(EIL 両手の高さを上げる 10回 W?)
逆に行ってみます。今度はそのまま仰向けになってもらい、屈曲方向を試します。
両脚をしっかり抱え込んでもらい1分ほどしてベースラインをチェックします。
変わり有りません。
(FIL 持続 NE)
はっきりしませんからさらに負荷を上げてみます。
座位になってもらい、思いっきり腰を曲げる運動を10回。
そしてケンケンしてもらうと……
痛〜〜っ!
一回目のケンケンでおもわずしゃがみ込んでしまいました。
痛みの具合をたずねると8点に激増しています。
はっきりとした変化が出ましたね!
本人は痛がっていても、検査する側としては内心ホッとしています。良かれ悪かれ変化があれば方針が決まるからです。
というわけで、再度腹臥位での伸展をしますが、身体がとても柔らかいため、手を出来る限り後ろについて、身体が後ろに折れ曲がるくらいにしっかりと反ってもらいます。
そして、10回終わって、再びケンケンしてもらうと……
だいぶいいです!3点くらい
痛みは激減し、軽い痛みはあるけどケンケンできるレベルになりました。
(EIL w/sag 手前に手をついて後ろにそるくらいにしっかりと 10回 B 8→3点)
姿勢指導、エクササイズ指導。部活の前後などしっかりとエクササイズをしてもらうことにして初回評価を終了しました。
そして、3日後。
エクササイズはそれなりに出来ていて、症状も軽減しているようですが、もともとあった痛みの半分程度が残っているようです。
再びベースラインチェック、左足でしゃがみ込み3点を本日のベースラインとします。
自宅でやっていたエクササイズをチェックすると、やはり楽にできているのでちょっと他の工夫が必要です。
そこで、しっかり伸びきった状態で1分くらい持続してみることに。
1分後。
さっきみたいにしゃがんでみようか
だいぶいいです!
何点くらい?
1点かな
(EIL持続 1分 better 3→1点)
さらにバスタオルを使って腰の負荷を自分で上げる方法を指導して持続すること1分。
再びベースラインチェック。
痛みはどうかな?
痛くないです
0点?
0.2かな
今回、左足首の前方の痛みのように見えましたが、運動制限することなく腰の動きによって目の前でほとんど痛まなくなるのですから、左足関節の運動しすぎによる足関節痛ではない事は明白ですね。
その当日に陸上の試合があるとのことで、試合の前にしっかりとエクササイズをすることを指導しました。
が、その後日談。
試合の会場では恥ずかしくてエクササイズをしなかったようです。
もちろん、走るのに問題は無かったようですが、少し痛みがある状態で試合に臨んだといいます。
この人前でエクササイズをすることの恥ずかしさという問題をどう克服するか……まだまだ課題はあるようです。