右踵の後の辺りの痛み、アキレス腱周囲炎のようにも見えますが…
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回は右踵が痛くて来院した14歳男児のお話です。
10代の踵痛…なんか似たような話があったような…と思われたあなたはマッケンジー法・症例ファイル通ですね!
野球の部活で走っていて、特にひねったり打ったりしたわけでないのに、右踵のあたりが痛くなってきました。心当たりと言えば最近走る距離が増えていることくらいです。
夏休みということもあり、朝から夕方まで7時間くらい野球練習…といっても途中、勉強時間も少しはあるようです。
痛みの部位を確認すると、右アキレス腱付着部あたりに圧痛を認めます。
仰向けになり、踵の痛いところを当てて左右に足先を振ってゴロゴロする動作で痛みが2-3点(考えうる最大の痛みが10点満点として)です。
走っている時は8点程度に増悪します。
姿勢はかなり悪く、付き添いに見えたお父さんから見ても明らかに猫背です…とここまでくるとますます怪しいですね!
もちろん整形外科ですから、念のため単純X線検査で右踵の状態を確認しますが、異常はありません。
診察台に仰向けで右足先を動かして右踵後方、アキレス腱付着部周囲に3点、自分でもそこを押して疼痛が再現できる事を確認しこれらをベースラインとして評価を続けます。
もちろん腰椎からですね!
野球をやっている元気なお子さんで、もちろんレッドフラグはありません。
可動域にも問題なしです。
まずはうつ伏せでの伸展検査から。
体が柔らかいのでしっかりとグーンと伸びてもらいます。
なんでこの体操??…といった表情です。
さて、10回終わって痛みを確認したときのように座ってみます。
自分で踵の痛いところをもう一回押してみてくれる?
さっきより痛くないです…1点くらい
(EIL 10回 better 右踵痛 2-3 → 1点)
このくらい変化があると自信を持ってもっと負荷をかけていけますね!
さらに負荷を上げて10回。
さっきみたいに押してみようか
痛くないです!
ゼロ?
はい!
(EIL w/sag 10回 abolish)
姿勢に加え、走る前後も含めて伸展エクササイズを指導し初回セッションを終了しました。
さて、2日後。
再来当日、走っても全く痛みは出なかったようです。
昨日は朝夕に伸展エクササイズを2セット、ランニング前後に1セットずつできたようですが、エクササイズの効果は疼痛が半減する程度でした。
過去に似たようなお話があったので、ピンとくる方がいらっしゃるのではないでしょうか。
そう、姿勢ですね!
姿勢はと言うと…やはりだらりが抜け切れていません。
症状はすでに無くなってはいますが、今後のことも考え、姿勢の重要性を再度ご説明しました。
今回はアキレス腱付着部の疼痛でアキレス腱周囲炎あるいはアキレス腱付着部症を思わせる症状でしたが、またもや腰のエクササイズで症状は改善してしまいました。
運動を特に制限することもなく、また消炎鎮痛剤など使うこともなく2日で治癒ですから運動のしすぎでもなければ炎症でもないことは明らかですね。
このように下肢の様々な症状が、その痛みのある部位に治療を施すことなく腰椎のエクササイズで改善することは決して稀ではないのです。