5年ほど前から時々あった左踵の軽い痛みが強くなりました
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回もまた前話に続き左踵の痛みで来院された50代女性のお話です。
15年ほど前から介護職をしています。5年ほど前から時々軽い左踵の痛みがあったのですが、症状が軽くさして気にならないため放置していました。
10日ほど前から特に思い当たることも無く左踵が痛くなり今回は痛みが強いため来院しました。
歩き始めが特に痛いようですが、正座をしていても痛みがあります。
右の踵の痛いところを確認すると踵のやや内側よりの比較的限局した部位に強い圧痛部があります。
単純X線線検査では踵骨棘(骨の棘のようなでっぱり)などの足の慢性の障害でみられる所見はありません。
ベースラインを確認した後、今回も腰から評価します。
レッドフラグは特にありません。
立位での屈曲はやわらかく指が床に届きます。伸展も明らかな制限はありません。側方の動きは制限ありませんが、いずれの方向にも軽度の腰痛があります。
座る姿勢を整えて、保持してみますが特に変化はありません。
(姿勢矯正保持 NE)
ここで再び立っていただき左踵の痛みを確認します。立位での左踵痛は3点(考えうる最大の痛みが10点満点として)、歩行時の左踵痛5点が確認できましたのでこれらをベースラインにします。
病歴から腹臥位での伸展をファーストチョイスにしました。
うつ伏せになっていただき、まずは腰椎の伸展を1回。もとに戻っていただき、症状に問題がない事を確認します。
(EIL NE)
比較的お元気な方ですので、伸展運動を10回続けていただき、立っていただきます。
歩いてみましょうか
あっ、だいぶいいです!3点くらい
(反復EIL 10回 B 歩行時痛 5→3点)
中年女性ですが、介護職で体力はありそうですので、さらに10回、今度は負荷を少し上げてやってみます。そして再び立って歩いていただきます。
踵の痛みはどうですか?
さっきよりもいいです…1点くらいになりました
(反復EIL 10回 w/sag B 歩行時痛 3→1点)
その翌日、翌々日とフォローしましたが、日中はあまりできないため少し痛かったようで、職場でもやりやすいように立位での伸展エクササイズを指導、その翌日フォローすると立位での伸展ではあまりはっきりとした効果が出なかったようです。立位と腹臥位の両方のエクササイズの効果を再度確認したところ、立位での反復伸展5回で左踵痛は5→4点、腹臥位での伸展5回で疼痛は4→1点とやはり痛みははっきりと軽減することが確認でき、できるだけ腹臥位でのエクササイズをする方針となりました。
今回のお話を読みながら、同様の症状で、足底腱膜炎と診断された方もいらっしゃるのではないでしょうか。もし単純X線写真の所見で少しでも骨棘が認められていたら…実際の疼痛にはなんの関係もなかったとして…さて、どんな診断と治療になっていたでしょうか……。
踵の痛いところがはっきりしていて、そこを押してもはっきりと痛いところがわかる状態でしたが、今回もまた腰のエクササイズで症状は改善してしまうことが確認できました。
実はまだまだ踵の症例が続くのですが……他にも様々な症状で来院された方々がどのように治っていったのかをご紹介したいので踵の症例は、また間を置いてご紹介することにいたします。