プラスチックのバットを素振りしていて急に痛くなりました
整形外科専門医であり国際マッケンジー協会認定セラピストでもある私がどのようにマッケンジー法による患者さんの評価・治療を行うのかをご紹介するマッケンジー法・症例ファイル。
今回はバットを素振りしていて急に左肘が痛くなったという10歳男児のお話です。
バットと言ってもプラスチック製の軽いバット。あまり負荷は大きくなさそうですが、意識してビュンビュンと肘を伸ばすよなバッティングの素振りをしていて急に左肘が痛くなったようです。
元気なお子さんで、他の情報からもとくにレッドフラグを思わせる所見は何もありません。
通常マッケンジー法では上肢の症状は頚椎から診察しますが、今回はこれまで全く症状のなかった元気なお子さんで、比較的強い関節運動を繰り返していて発症した関節痛ですので、先に肘の診察を先にすることにしました。
もちろん肘の診察をしながら、もし頚椎が怪しいと思ったらまた戻ればよいのです。
肘関節の可動域には明らかな左右差はありません。
単純X線写真でも特に異常はないようです。
今回は繰り返す伸展ストレスにより発症していますので、屈曲から評価してみることにします。
右手でギューって左肘を曲げてみようか
痛いです
我慢できるくらい?
はい
さらにゆっくりと自分のペースでしっかりと負荷をかけて左肘を曲げてもらい、全部で5回繰り返してもらいます。
最初の1回目に曲げたのと、最後に曲げたのと比べてどっちが痛かった?
だんだん曲げても痛くなくなってきました
さらに5回繰り返します。左肘の痛みは屈曲、伸展とも軽減してきました。
エクササイズの指導をして初回評価終了します。
その翌日。
もう痛くないです!
エクササイズはかなり頑張ったようで、10回/セットで10セットくらいしたとのことです。
何セット目くらいで痛くなくなったかな?
最初の1セット目で痛くなくなりました
家に帰って最初に1セットしていて自分で戻った感じがわかったようです。
その後は曲げ伸ばしでの痛みは全くなくなりました。
今回の肘の痛みは肘関節の問題だったようです。
診察の時間は無限ではありません。マッケンジー法の基本ルールを守りながら、限られた時間内にある程度の結果を出すためには、時に近道を行くときもあります。
しかし、むやみに近道を行くのではありません。医療面接で得られた情報と患者さんの様子などをうかがいつつ根拠を持って近道を行き、仮にゴールに到達できない道だった場合には、基本に戻って別のルートを探していきます。